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インディカー第14戦トロント:波乱のレース2はコンウェイが勝利。琢磨も健闘

2014年07月21日 09:30  AUTOSPORT web

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今季2勝目を喜ぶマイク・コンウェイ
ダブルヘッダーで開催されているベライゾン・インディカー・シリーズのトロント戦。第14戦となるレース2が20日午後に行われ、マイク・コンウェイ(エド・カーペンター・レーシング)が今季2勝目を飾った。佐藤琢磨(AJフォイト)は、後方から追い上げ今季最上位フィニッシュとなる5位でレースを終えた。

 レース1が日曜に延期されたため、スターティンググリッドはレース1終了時点のエントラント・ポイントで決定。ポールポジションはポイントリーダーのエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)のものとなり、ポイント2位のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がフロントロー外側グリッドからスタートした。

 レース1で圧勝したセバスチャン・ブルデー(KVSH)は10番手スタート、昨年のトロントでダブルヘッダーの2戦ともを制したスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は7番手スタートだった。

 レース2はスタンディングスタートで、PPからカストロネベスがトップをキープ。「ブルデーのようにレースをリードし続けて勝ちたい」といっていた彼は、ドライからウエットに路面が変わっても安定した速さを保ち、言葉通りの優勝を手にするかと見えていた。
 3番手スタートだった、つまりはポイントスタンディングも3番手のサイモン・ペジナウ(シュミット・ピーターソン)はスタート後6周で電気系トラブルでスローダウンし、優勝戦線から脱落した。

 10周目過ぎから小雨が降り出し、3番手を走っていたファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)がターン8のタイヤバリアに突っ込んだ。彼のマシンを避けようとしてトロントが地元のジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)がクラッシュし、ミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)はモントーヤのマシンの下に潜り込むクラッシュを起こした。

 カストロネベスのトップは安泰と映っていた。しかし、レースが終盤に入ってからの42周目、パワーがチームメイトのパスついにに成功した。ターン3へのアプローチで2台は接触したが、どちらもスピンに陥ることはなく、パワーが前に出ることに成功した。

 ポイントスタンディング2番手のパワーとしては、何としても勝ちたいレースだった。しかし、この後にまだドラマチックな展開が待っていた。

 レーシングラインがどんどん乾いて行き、スリックの方が速いコンディションに変わって行ったからだった。チャンスを掴もうとタイヤ交換を行なったのはカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)とマイク・コンウェイだった。そして、彼らがスリックに交換した直後にセバスチャン・サーベドラ(KV/AFS)がタイヤバリアに突っ込み、この日5回目のフルコースコーションへ。

 トップグループはウエットからスリックに履き替えるピットストップ。そして、ウエットタイヤのままゴールを目指す奇襲に出たのがジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)、ジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング)、カルロス・ヒュータス(デイル・コイン・レーシング)、そしてルカ・フィリッピ(RLLR)の4人だった。このコーション前にトップだったパワー、2番手につけていたカストロネベスは、それぞれ一気に6、7番手に後退した。

 すでにこの時点でレースは65周でではなく、スタートから80分でゴールとなることが明らかになっていた。ウィルソンが大逆転の優勝という可能性もあった。またしてもデイル・コイン・レーシングの作戦が大当たりか……という状況だった。アイオワに続き、トロントのレース2でも作戦のを味方につけ、シボレーが圧倒していたレースでホンダ勢が優勝となるのかとも考えられた。

 しかし、レッドタイヤ装着のコンウェイはリスタートが切られるや2周でフィリッピとヒュータスをパス。50周目にはウィルソンも抜いてトップに躍り出た。これでレースは終らず、51周目のターン3でさらに多重クラッシュが発生したのだ。

 チャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)がヒュータスに接触。ヒュータスとそのすぐ後ろを走っていたライアン・ブリスコ(チップ・ガナッシ)がスピンし、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)、ムニョスが被害を被った。

 ストールしたマシンが多く、フルコースコーションのままゴールになると判断したインディカーは赤旗を出してレースをストップ。コース清掃を行った後、残り時間2分38秒でグリーンフラッグを振った。ゴールまで3周のスプリントをコンウェイは余裕を持って制し、自身の今季2勝目、エド・カーペンター・レーシングに今季3勝目をもたらした。

「今日のレースは難しかった。僕らはマシンのハンドリングが悪く、苦戦をしていた。しかし、レースが終盤になってからラインが乾き出した。ここはスリックに換えるチャンスだと見て、ピットに飛び込んだ。それでトップに躍り出たが、赤旗になった。それでも、リスタートからのタイヤはすぐに温度も上がり、優勝へと突っ走ることができた。最後の3周は本当に楽しかったよ」と、まんまと優勝をかっさらったコンウェイは語った。

 2位はトニー・カナーン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、3位はパワーのものとなった。

 ポイントトップで2位フィニッシュは固いという戦いを見せていたカストロネベスだったが、ドライタイヤへの交換で後退した後に他車との接触でフロントウィングにダメージを受け、赤旗前にふたつ、ゴールまで3周のスプリントで更に4つもポジションダウン。12位まで順位を落としてのゴールとなった。

 4位はアチコチぶつかりまくっていたキンボール。そして、5位は最後尾手前の22番グリッドからスタートした佐藤琢磨だった。恵みの雨を得たレース中盤にトップ10へと進出し、滑り易いコンディションでのスリックタイヤでの戦いでもポジションを上げて行くことに成功、今シーズン自己ベストとなるトップ5入りを果たした。

「ずっと不運続きでしたが、クルーたちはモチベーションを高く保ち続けてくれていました。今日はドライからウエット、またドライと路面コンディションの変わる難しいレースになっていましたが、ホンダ勢トップとなる5位でフィニッシュできたことを誇りに感じています。これで不運は吹き飛ばせたと思います。次のミド・オハイオ、その次のミルウォーキーと好きなコースが続きますから、この調子を保ってシーズン終盤戦を戦って行きたいと思います」と琢磨は笑顔で語った。

 ポイント状況は、トップはカストロネベスで変わらず533点。2番手のパワーは13点差の520点。3番手は再びハンター-レイの手に戻り、彼はカストロネベスと69点差だ。4番手のペジナウは462点で、ハンター-レイとは2点差で、トップとは71点差だ。

 トロントでのダブルヘッダーはいずれのレースでもシボレー軍団がトップを独占した。レース1はトップ3をスウィープし、レース2では4位までがシボレーユーザーとなった。

(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)