グランプリが開始される直前に新しいオーナーに売却されたのが、2週間前に行われたイギリスGPのことだった。そして今回のドイツGP直前に、小林可夢偉が所属するケータハムF1チームに再び激震が走った。それは、クリスチャン・アルバースがチーム代表も兼任し、チームのリストラを断行したからである。チームは明らかにしていないが、その数は40名にものぼると言われている。
「チーム代表の経験がないということは、チャレンジングではあるものの、ここまで来てしまったチームを再建には、逆に良い方向へ進むチャンスになるかもしれない。確かに人数は少なくなって、ひとりひとりの仕事量は増え、責任感も増した。でも、逆に言い訳ができない環境になったとも言える。ウチのような下位チームには、このような小さい所帯のほうが良いと思うので、今回の変更はチームの経営者として、正しい判断だったと思う」
ドイツGP直前、ヨーロッパの一部のメディアは、リストラ候補として可夢偉の名を真っ先に挙げた。そんな報道にも、可夢偉は自分を見失わず、ドイツGPへ向けて、しっかりと準備を整えていた。
「僕は無給ですから。僕を切ったところで、何も変わらない。もし、持参金をたくさん用意したドライバーがやってきて、僕がシートを失うようなことがあったら、それはこのチームがマシンを速くする開発を諦め、目先の儲けに走ったということ。そうなったら、もうスポーツではなく、単なるビジネス。そんなチームに僕は興味はありません。人を切ったということは、その人たちに支払っていた人件費を開発費に充てて、マシンを速くするという決断をチームがしたからだと思います。そして、その速いクルマで結果を残すためには、僕はこのチームに必要だと信じています」
ある意味、イギリスGP時以上に厳しい状況の中でスタートしたドイツGPのケータハム。しかし、状況が厳しくなればなるほど、可夢偉という強い存在の輝きは、一層増して見える。
(尾張正博/F1速報)