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早稲田はコピペしても「博士号」が取れる?小保方さんが「学位取消」にあたらない理由

2014年07月17日 23:41  弁護士ドットコム

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理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが大学院時代に執筆した「博士論文」に盗用などがあると指摘されていた問題で、早稲田大学の調査委員会(小林英明委員長)は7月17日、小保方リーダーは「不正の方法」を用いたが「学位取り消し」にあたらないとする調査結果を発表した。


【関連記事:<小保方博士論文>「不正あったが学位取消に該当せず」早大調査委・配布資料(全文)】



小保方リーダーは2011年、早稲田大学先進理工学研究科に博士論文を提出し、博士号(工学)を取得した。ところが、今年1月にSTAP細胞が発表されて以降、小保方さんの研究論文に次々と疑惑が発覚。インターネットなどで、博士論文に文章の盗用や画像の流用などの疑いがあると指摘されていた。



●「心情的にはおかしいと思っても学位は取り消すことができない」


小保方リーダーの博士論文について、調査委は報道向けに配布した資料の中で、「多数の問題箇所があった」「内容の信ぴょう性および妥当性は著しく低い」と痛烈に批判している。それにもかかわらず、なぜ「学位取り消し」にはあたらない、という結論に至ったのか。弁護士でもある小林委員長は記者会見で、次のように説明した。



「学位の取り消しは一つの法律行為なので、その要件に合致しなければ、たとえ心情的にはおかしいと思っても、取り消すことができない性質がある」



その要件とは、いったいどういうものか。早稲田大学の学位規則では、博士号をはじめとする学位授与を取り消す要件として、「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき」と定めている。小林委員長はさらに解説を続ける。



「不正行為のすべてが『不正の方法』になるわけでない。不正の方法の『方法』とは、ある種の計画的な手段という意味なので、過失的な不正行為は、『不正の方法』に入れない。つまり、不正として認識しているものだけが、『不正の方法」にあたるということになる。その意味で、過失による不正行為はここから外される」



このような理屈によって、調査委は小保方リーダーの博士論文のうち、「序章」のなかの6カ所について、他の著作物からの盗用(コピペ)などによる「不正の方法」が用いられたと、認定したのだという。



●「不正の方法」が重要な影響を与えたとはいえない


さらに、小林委員長は、「学位取り消し」に該当するためには、「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係が必要だと力説する。結局、「因果関係がなかった」と認定されたことが、「学位の取り消しにあたらない」と判断される理由になった。



そのロジックは、小林委員長によると、次のようなものだ。



「不正の方法があったとしても、その『不正の方法』によって『学位の授与』を受けたという要件を満たさなければいけない。つまり、『不正の方法』と『学位の授与』との間に因果関係が必要になる。



因果関係というのは、ある事実があった後にある事実がある、ある事実がなければある事実がない、といった関係のことをいう。つまり、それが学位授与に重大な影響を与えたという場合に、初めて因果関係があるといえるレベルになる。



早稲田大学では、査読付きのジャーナルに受理されているということが学位授与に非常に大きな影響を与えている。それが受理されていれば、あとは指導教員が論文を丁寧に指導すれば、ほとんど学位がとれるということが実態になっている。



今回、小保方さんは査読付きのジャーナルに受理された論文を持っており、それに基づいて博士論文を書いている。そういう状況下で、学位の授与に重大な影響を与えたかを検討した。



最終的には、学位の授与に一定程度の影響を与えたという事実はあるけれど、重要な影響を与えるとまではいかない、科学の論文なので、実験結果の部分で盗用がない以上、重要な影響とまでは言えないという結論になった。



このような議論の末、今回の場合、不正の方法により、学位授与の取り消しにはあたらないという結論に至った」



(弁護士ドットコム トピックス)