2014年07月17日 11:11 弁護士ドットコム
政務活動費の不適切な支出をめぐり、議員辞職した野々村竜太郎・元兵庫県議。初当選以降の政務活動費約1834万円全額を返還すると表明しているが、疑惑に対する明確な説明はまだない。議員辞職で幕引きのようにも見えるが、今後「刑事事件」に発展する可能性も出ている。
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報道によると、兵庫県議会は7月11日、「虚偽公文書作成・同行使容疑」で、野々村氏を兵庫県警に刑事告発し、受理された。告発状では、昨年11月に西宮市内の高校で開かれた行事に出席したとして、野々村氏が電車代360円を計上したことを「虚偽事実」としたとみられる。県議会の調査では、野々村氏が行事に出席していなかったことが判明しているという。
また、兵庫県警が「詐欺容疑」での立件も視野に捜査に着手したと、報じられている。今後、野々村氏が逮捕・起訴される可能性はあるのだろうか。冨宅恵弁護士に聞いた。
「まず、政務活動費とはどういうものなのか、理解する必要があります」
冨宅弁護士はこう切り出した。
「地方議員の政務活動費については、地方自治法100条14項から16項に規定されており、地方自治体は、議員の調査研究などのために必要な経費の一部を、政務活動費として交付することができます。
その金額や、政務活動費として充てることができる経費の範囲は、自治体が定める条例によって決まります。
政務活動費の交付を受けた議員は、収入と支出の報告書を作成し、議長に報告しなければなりません」
今回は、この報告書に記載された内容が不自然だったことから大きな騒動につながった。では、県議会が野々村氏を刑事告発した「虚偽公文書作成・同行使容疑」については、どうとらえればいいのだろうか。
「政務活動費の報告書は、決められた形式に従って公務員が作成する文書ですので、公文書となります。
したがって、県会議員が虚偽の報告書を作成すると、『虚偽公文書作成』という犯罪に該当します」
一方で、兵庫県警は「詐欺容疑」での立件も視野に入れていると報じられている。どんなことが「詐欺」にあたるのか。
「『兵庫県政務活動費の交付に関する条例』では、議員1人あたり月額50万円の政務活動費を交付すると定めていますが、政務活動費を全額使用しなかった場合は、残額を返還しなければなりません。
したがって、虚偽の報告書を作成し、残額の返還を免れたということになりますと『詐欺罪』にも該当します」
報道によれば、「兵庫県議会」が刑事告発した犯罪と「兵庫県警」が捜査に着手した犯罪が異なっている。これは、なぜだろうか。
「兵庫県議会が『詐欺罪』ではなく、『虚偽公文書作成および同行使の罪』で告発した理由は、告発した時点で、野々村氏が返還すべき政務活動費の金額を把握できていなかったからではないでしょうか。
あるいは、確実に把握できる金額が少額に留まっていて、告発の内容としてインパクトがなかったからではないかと思われます。
ただ、告発を受けた警察は、『虚偽公文書作成および同行使』の捜査を端緒として、『詐欺』についても捜査を行うことになるでしょう」
なるほど、「虚偽公文書の作成・行使」が入り口になっているようだ。では今後、野々村氏が逮捕される可能性はあるのだろうか。
「虚偽報告の内容や、返還すべきであるにもかかわらず返還していなかった金額、今後の供述内容しだいでは、野々村氏が逮捕される可能性もあるでしょう。
仮に、逮捕されるまでには至らなかったとしても、政務活動費がたびたび問題としてとりあげられていることや社会に与えた影響が大きいこと、県議会議員による犯罪であることなどを考慮すると、起訴される可能性は十分にあると思います」
「号泣会見」のインパクトだけが一人歩きして、未だに不透明さがぬぐえない今回の騒動。マスコミの前に姿を見せなくなった野々村氏は今後、どう対応するのだろうか。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
冨宅 恵(ふけ・めぐむ)弁護士
多くの知的財産侵害事件に携わり、様々な場所で知的財産に対する理解を広める活動にも従事。さらに、収益物件管理、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。
事務所名:イデア綜合法律事務所
事務所URL:http://www.idea-law.jp/