パディ・ロウの案内でレースサポートルームを見学した後は、各部門の担当者に製造部門を案内してもらった。マシンショップには6台の工作機械が並んでいる。そのほとんどが「Matsuura」ブランドの松浦機械製作所製だ。
「小さなものはワッシャー。大きなものはギヤボックスのケーシングをこれらの機械で作っている」と、マシンショップの担当者は説明してくれた。完成品の例として見せてくれたギヤボックスケーシングには「Sergio Perez Shunt」と書いた紙のメモが貼り付けてあった。第7戦カナダGPでクラッシュした、フォースインディアのペレスのギヤボックスケーシングである。その修復が完了し、検査を待っている状態だった。
ところで、ギヤボックスケーシング自体はCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)製である。5軸制御の工作機械が製作を受け持つのは、サスペンションアーム類を取り付けるブラケットや、ブラケットを支え、剛性を確保するためのインサートなどだ。
ギヤやシャフトなど、変速機構はアルミ合金削り出しの専用ケース(カバーの一部はチタン合金削り出し)に収められる。ギヤボックスアッセンブリー(組立)ルームで作業の様子を眺めたが、非常にコンパクトだった。メルセデスのギヤボックスは、そのアルミケースをCFRP製のケースに収めるという、二重構造となっている。
マシンショップでは、フロントウイングを支えるスチール製インサートも見せてもらった。ウイングには非常に大きな荷重が掛かるため、CFRPだけでは剛性が足りない。重量を考えればアルミにしたいところだが、それでもやはり剛性が足りないので、重量増のハンデを抱えるとしても、剛性が確保できるスチールを採用しているのだという。
サーキットを走ったときと同じ入力を各輪に与え、サスペンションのセットアップに生かす7ポストリグ(7ポスター)は、次戦ドイツGPに向けて稼動中だった。モノコック前端上部にサードエレメントのスプリング&ダンパーが露出した状態だったが、FRIC禁止の動きを受けて機能をキャンセルしていたのかどうかは、見た目では判断できなかった。
(世良耕太/Kota Sera)