2014年のスーパーGTは開幕3戦を終え、7月19日~20日にスポーツランドSUGOで第4戦を迎える。新時代を迎えた2014年シーズンも、いよいよ中盤戦に突入だ。7月中旬から8月末にかけては今回のSUGOから第5戦富士、第6戦鈴鹿と2ヶ月で3レースが行われることになり、スーパーGTの開催間隔としては例年に比べタイト。夏の3連戦と言えるカレンダーだ。
その“第一幕”と言える第4戦の舞台は1周3.7km。非常にアップダウンが激しく、タイトながらチャレンジングなコーナーが多いスポーツランドSUGO。天候も急に変わることもあり展開が読めないことも多く、スーパーGT/JGTCの歴史の中でもドラマチックなレースが数多く展開された舞台でもある。それでいて仙台市内からのアクセスも良く、毎年多くのファンが訪れるレースだ。ファンにとってもチームにとっても非常に重要な一戦と言えるが、蔵王連山を望む菅生の森で、いったいどんなドラマが待っているのだろうか。今回の見所をご紹介しよう。
●テストから大きな変化が加わったGT500
今季、DTMドイツツーリングカー選手権と車両規定を統一した新規定GT500クラス車両がSUGOを走った回数はそれほど多い訳ではない。全車が参加したテストとしては5月10日~11日に行われた公式テストが挙げられるが、このテストからある“条件”の変更があったこと、そしてその後GT500では別の“条件”が変更されているため、あまりテストのタイムは参考にならないかもしれない。
その“条件”のひとつめは、富士スピードウェイで使用されるロードラッグ仕様のエアロがこのテストから使用されたことだ。今季、GT500車両は実質的に2種類の空力パッケージしか使用できないことが決められている。それは長い直線をもつ富士用のロードラッグ仕様と、それ以外のコースで使用されるハイダウンフォース仕様のふたつだ。
ただ、今季のGT500車両は昨年までよりも大幅にコーナリングスピードが向上しており、“もし何かアクシデントがあった時に”バリア等の安全設備までに充分に減速できない恐れがあるため、第3戦オートポリス、第4戦SUGOに関してはロードラッグ仕様を使うことが検討されたのだ。最終的にメーカー間の調整がつき、GT500全車がロードラッグ仕様で走行したのがSUGOテスト1日目の午後からという訳だ。
また、ふたつめの“条件”は、ホンダNSXコンセプト-GTの参加条件が変更されたことだ。FRレイアウトが前提の新GT500規定の中で、市販車のイメージを守るため唯一ミッドシップレイアウト+ハイブリッドを装着したのがNSXコンセプト-GT。ただ、同様に今季から導入された“NRE”2リッター直4直噴ターボエンジンの熱の問題に苦しみ、本来のポテンシャルを発揮できていなかった。
しかし、この第4戦からNSXコンセプト-GTは熱対策を行うことが認められたほか、競技車両最低重量が13kg軽減された。ホンダの松本雅彦GTプロジェクトリーダーは、この“重さ”の部分がハンデになっていると語っていたが、文字通りこのハンデが“軽減”されたと言っていいだろう。また、これ以上に大きな変更点が実は熱対策の方。熱対策が進めば、エンジンの本来の性能を出せたりとメリットが大きい。実際、この熱対策が施された6月27日~28日の鈴鹿テストでは、NSXコンセプト-GT勢は他陣営と互角の速さをみせた。あえて“茨の道”を通ってきたホンダ勢にとってはこの夏の3連戦こそ、本格的なシーズンのスタートと言ってもいいかもしれない。
●読みづらい戦力図。“夏と言えば”のタイヤメーカーの強さは?
ご紹介したとおり、今回のSUGOでの第4戦は、5月のSUGOテストから多くの変更がなされており、非常に読みづらいラウンドと言える。ロードラッグ仕様を装着したGT500クラス車両は、ハイダウンフォース仕様に比べると10%ほどダウンフォースが落ちていると言われており、タイヤにかかる負担が大きくなる。特にかなりの速度域で旋回するSPコーナーや最終コーナー等は、ひょっとするとアクシデントの温床になってしまうかもしれない。
また、タイヤの負担はレースペースにとっても重要なファクターのひとつ。特にこれから暑さが増してくると、路面温度との兼ね合いが非常にタイヤメーカーにとっても悩ましいポイントとなる。
ちなみに、5月のテストの際の最速タイムは、4セッション中レクサスRC Fが3回。ニッサンGT-RニスモGT500が1回。ただ1回は各車のエアロがバラバラだったためあまり参考にはならない。3セッションで考えると、レクサス2回、ニッサン1回となる。
ただ、この時季から比べると第4戦はかなり暑さが増すことが予想される。ちなみに第3戦オートポリスも日中はかなりの暑さだったが、近年のスーパーGTで暑い時季の“定説”となっているのが、夏のミシュランタイヤ勢の強さ。第3戦オートポリスではロードラッグ仕様のニッサンGT-R勢が速さをみせ表彰台を独占したのは、記憶にも新しいところだろう。テスト時のレクサスRC F勢の速さもあるが、ニッサンGT-R勢がここSUGOでも速さをみせる可能性がある。特にミシュラン装着の2台が要注目の存在と言える。
GT-R、RC Fの間に、今回条件&熱対策が変更されているホンダNSXコンセプト-GT勢がどう食い込んでくるのか。先述のとおりミシュラン勢の夏の強さを考えると、今回山本尚貴/フレデリック・マコウィッキというコンビにドライバーを変更したウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTが興味深い存在と言えるだろう。
●JAF-GT勢が優位か? 混戦GT300はまだまだ続く
今季、JAF-GT勢とFIA-GT3勢の戦力差がかなり接近していると言えるGT300クラス。GT500クラスと異なり、GT300を予想する時には5月の公式テストのタイムが役に立つ。このテストで速さをみせたのは、JAF-GT規定のマシンたちだ。
特に速かったのが、今季大幅にマシンを改良してきたOGT Panasonic PRIUS。ただ、これまでのラウンドはトラブルによりなかなか思うような成績を残せていない。SUGOはコース特性としてもJAF-GTが合っている印象があり、プリウスはトラブルをなくすことができれば上位に進出してくるだろう。また、SUBARU BRZ R&D SPORTも要注目の1台なのは間違いないし、今回エアロを開立してくると思われるホンダCR-Z GT勢のパフォーマンスに注目が集まる。
FIA-GT3勢では、開幕から速さをみせるBMW Z4 GT3勢が今回も注目だろう。ただGT500も同様だが、ウエイトハンデがかなり苦しさを増してくるのがSUGO。特に最終コーナー~メインストレートではウエイトが重くのしかかってくる。開幕2戦で連勝を飾ったグッドスマイル 初音ミク Z4は第3戦こそノーポイントだったが、80kgのハンデにより今回も苦しい戦いを強いられるかもしれない。タイヤのポテンシャルがどう補い、いかに上位でポイントを得ていくかが重要だろう。
そこで注目しておきたいのが、Studie BMW Z4とTWS LM corsa BMW Z4という2台。Studieも46kgというハンデを負うが、特に注目なのがTWS LM corsa。特にシェイクダウンでこのSUGOは走っており、前戦オートポリスよりも上位に進出する可能性がある。
また、ランキング5位のB-MAX NDDP GT-R、予選で速さをみせるシンティアム・アップル・MP4-12Cなども注目だろう。とは言え、まったく読み切れないのがSUGOの特色。最終的にトップでチェッカーを受けるのはどのマシンだろうか? GT500と同様、タイヤのパフォーマンスがレースを左右する可能性も高い。