メルセデスAMGペトロナスF1チームの本拠地は、イギリスのブラックレーにある。地名に聞き覚えがあるかもしれないが、元はブリティッシュ・アメリカン・レーシング(B.A.R/1999年~2005年)の本拠地であり、2006~2008年まではホンダ・レーシングF1チーム、2009年はブラウンGPの本拠地として機能した、その建物だ。
ブラウンGPを引き継ぎ、2010年からF1に参戦しているメルセデスAMGは、B.A.R~ホンダ~ブラウンが使っていた施設を「居抜き」で使っている。驚いたのは、ホンダ時代からそこにあった展示車両やスケールモデルが、メルセデスのカラーリングに塗り変えられて、変わらずに存在していたことだ。展示する側も見る側も、細かいこと(細かくはないか?)はあまり気にしないのだろうか?
ファクトリーを訪問したのは第9戦イギリスGPの翌日。レセプションには前日に受け取ったばかりのトロフィーが、第8戦オーストリアGPのトロフィーと並んで展示してあった。勢いに乗るチームであることを、さりげなくアピールしているようだ。
案内役のひとりは、同チームのエグゼクティブディレクターであるパディ・ロウだった。ガラス張りのレースサポートルームには、大型のスクリーンがある。レースウィークエンドはここにいながらにして、現地と同じ情報が手に入る。レースではニコ・ロズベルグがギヤボックスのトラブルでリタイアしたが、その際は現地とレースサポートルームで情報をやりとりし、善後策を協議したという。
我々が訪問した際、前日リタイアに終わったロズベルグが、机に腰掛けてエンジニアのひとりと談笑中だった。一方、赤い帽子を被ったルイス・ハミルトンはモニターを挟んで複数のエンジニアと活発な議論を交わしていた。「モニターに映っている映像から察するに、ピットストップ時の作業手順について確認しているのだろう」と、ロウは説明する(当然、撮影はNGだ)。
波の乗るチームは違うな、と思わせるに十分な、熱心な仕事ぶりである。
(世良耕太/Kota Sera)