アイオワスピードウェイで開催されているベライゾン・インディカー・シリーズ第12戦。12日に行われた決勝レースは、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が残り2周でトップに立ち今季3勝目を飾った。佐藤琢磨(AJフォイト)は、ミカエル・アレシン(SMPレーシング)と接触し序盤にリタイアとなった。
予選2位だったトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)の速さは圧倒的だった。彼に本当の意味での勝負を挑めたのはチームメイトでポールスタートだったスコット・ディクソンだけだった。ディクソンは序盤に一旦ポジションを下げたが、マシンのハンドリングを向上させ、ゴール前50周でトップに返り咲いた。
ゴールを前にしたロングラン、カナーンは安定した走りを続け、チームメイトからトップの座を奪い返した。その後はもうゴールまで走り続けるだけでよい、という状況だった。
しかし、残り30周を切ってから出されたフルコースコーションにより、カナーンの楽勝はふいになった。1ラップダウンからリードラップに復活し、グングン順位を上げていたファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)が、エド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)と接触してクラッシュして出されたイエローだった。
ここで中団グループがタイヤを交換する作戦に出た。60周を走ったタイヤを装着するトップグループと、フレッシュタイヤに替えた9番手以降のドライバーたち。この戦いは高いグリップを武器とする側が断然有利だった。トップグループとしてはリードを手放す可能性のある作戦は採用しにくかった。レース終盤であったから尚更のことだった。
そして、その状況を見事に味方につけたのが、純粋なスピードで優勝を争うことができていなかった面々だった。その中から最高のパフォーマンスをゴール前の土壇場で見せたのがライアン・ハンター-レイだった。先行する8台をパスし、ゴール前2周でトップに躍り出た彼は今季3勝目いちばん乗りを果たした。アンドレッティ・オートスポートはこれでアイオワ4連勝だ。
「凄い結末になった。あのタイミングでのタイヤ交換は大きなギャンブルだった。今日の勝利はその作戦を決断したチームオーナーのマイケル・アンドレッティと、エンジニアのレイ・ガスリンの功績だ。こんな幸運、僕のレースキャリアで初めてだよ」とハンター-レイは喜んでいた。
「レース中盤には7、8番手辺りにスタックして、フラストレーションが溜まっていた。序盤は凄く良いマシンで、今日は勝てる! とまで思ったぐらいだったんだけれどね。最後はもうタイヤのグリップの違いにより、左右からどんどん抜いて行いけた。テレビゲームみたいだった」
2位はハンター-レイと同じ作戦を採用し、ゴール前の10周で9台をパスしたジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン)のものとなった。キャリアベストに並ぶ2回目の2位。そして、今季最初の表彰台となった。
カナーンは失意の3位。4位はディクソン。5位はカーペンターだった。最後のイエローが出る直前、シボレーはトップ6を独占していた。それが急転直下、ホンダの1-2フィニッシュに変わったのだから、インディカーレースでは本当に何が起こるかわからない。
佐藤琢磨はアイオワでも不運を払いのけ切れていなかった。予選16位からスタート。まだハンドリングを向上させるべく様子を見ている段階だったが、雨による赤旗明けのリスタート直後、ルーキーのミカイル・アレシンがスピンして琢磨の目の前に現れ、避けようもなく2台はクラッシュ。その場でレースを終えた。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)