2014年07月13日 11:01 弁護士ドットコム
アマゾンから消費税なしで、安く電子書籍を買えた時代が終わる——。
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財務省は6月下旬、海外企業から国内にインターネットを通じて配信される書籍や音楽、ゲームなどについて、消費税を新たに課税する制度の概要を発表した。2015年度中の適用を目指す。
これまで、アマゾンのように、海外に住所や本店のある企業から、電子書籍などを購入した場合、消費税が課されていなかった。だが、今後は配信企業ではなく、購入する側の住所や本店の所在が基準になるため、国内で消費する場合は、消費税が課されることになる。
今回の制度改正で、消費税分だけ安く購入することができなくなるため、消費者にとっては単なるデメリットしかないのではないだろうか。また、海外企業から具体的にどのようにして消費税を徴収するのだろうか。佐藤亜津子税理士に聞いた。
佐藤税理士は、制度改正の背景について解説する。
「消費者側からすると実質的に同じサービスであっても、企業の所在地が国内・海外かの違いで消費税分の負担が異なり、結果として企業間の競争条件にゆがみが生じていました。
このゆがみがなくなることにより、企業間の競争が、単なる税負担の違いのみでなくサービスの質なども含めた競争になります。
結果として消費者はさまざまな選択肢を持つことが期待できるのではないでしょうか。消費者にもメリットのある改正と考えることができます」
なるほど、確かに消費税の金額だけ安く購入することはできなくなるが、今後、競争が行われることで、サービスの向上につながる可能性がありそうだ。
では、海外の企業からどうやって徴収するのだろうか。
「徴収方法はまだ決定されていませんが、6月27日に政府税制調査会から発表された資料によると、欧州(EU)の消費税である欧州付加価値税(VAT)と同様の徴収方法が採用されるようです」
どういった仕組みなのだろうか。
「具体的には、消費者向けのサービスに対する消費税は、海外企業が消費者から消費税を預かり、納税義務者として申告・納税する方法です。
一方、事業者向けのサービスに対する消費税には『リバースチャージ方式』が導入されるようです。
リバースチャージ方式とは、サービスを提供する海外企業に代わって、サービスを受ける国内の事業者が納税義務者となり申告・納税する方法のことです」
サービスの提供先が消費者か事業者かによって、納税方法が変わってくるということだ。
「今回の改正は、日本の消費者にサービスを提供するすべての海外企業が対象になりますので、各国の税務当局と連携して周知徹底していただきたいと思います。
そうしないと消費者にとっては、それこそ単なる負担増になってしまいますからね」
適切な運用がなされることを期待したい。
【取材協力税理士】
佐藤 亜津子(さとう・あつこ)
1973年生まれ。2002年2月、地元横浜にて開業。創業期の法人・個人事業主を中心に税務・会計はもとよりあらゆる相談に乗っている。プライベートではロックをこよなく愛する3児の母。
佐藤亜津子税理士事務所
http://atsuko-tax.jp/
(税理士ドットコムトピックス)