2014年07月12日 14:01 弁護士ドットコム
ジャーナリスト津田大介氏のメールマガジンをまとめた電子書籍「津田本」の発売記念イベントが7月9日夜、東京都内で開かれた。津田氏のほか、ニコニコ動画を運営するドワンゴの川上量生会長が登壇し、電子書籍の今後について議論した。
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川上氏は、ネットの影響を受けて、出版社のつくる本の内容が軽くなっていると指摘。「無料コンテンツがあふれるネットの中で、電子書籍を売るためには、玉石混交の玉だけ集めたもので、お金をとらないといけない。しかし、いまは石が一緒に入った福袋を電子書籍として売ろうとしている」と警鐘を鳴らした。
今後、クオリティを上げるために川上氏が挙げたのが、「玉」だけを集めることのできる「編集者」の存在だ。川上氏と津田氏は、「編集」のあり方をめぐって、次のようなディスカッションを繰り広げた。
津田大介氏(以下、津田):これまでの電子書籍は、既刊の書籍を電子化しただけのものがほとんどでしたが、今回は、編集者の力で、既刊のものを組み直して、別のものにするということをやりました。取り組みとしては新しかったと思います。今後、電子書籍では、編集者の関わりが重要になると思います。
川上量生氏(以下、川上):たぶん編集者が重要なのは、電子書籍だけじゃないと思いますね。ネットで文章を書く人は、校正もせず、そのままアップロードする人が多い。ネットの影響で、今の本も、昔とくらべて内容が軽くなっている印象があります。その揺り戻しが起こるんじゃないかと思います。
津田:電子書籍にかかわらず、(ネット全般について)編集者が関わったサイトを読者は読みたくなるんでしょうか?
川上:そのあたりに興味があります。僕がネットの文章を見て問題だと思っているのは、全体的に軽く、密度が低いところです。文章の信頼性が下がっていると思います。そんな文章が大量に発信されていて、しかも全部無料です。インターネット空間で電子書籍を売るためには、電子書籍のクオリティをあげないといけない。
一方で、ネットにあるような文章を寄せ集めた本が増える可能性があります。そうなると電子書籍の存在意義がなくなるんじゃないかと思います。
津田:著者がブログをアップするように、(簡単に)電子書籍を出版できるというのは、著者を救わない可能性もあるわけですね。
川上:マーケットの問題ですね。誰も買わなくなる。
津田:情報が無料で流通するインターネットでは、クオリティも玉石混交で、どちらかというと石のほうが多いわけです。電子書籍は、玉の割合を増やしていくことで、ユーザーにとって価値も上がってくるということですね。
川上:無料のコンテンツがあふれるネットの中で、電子書籍を売るということは、玉石混交の玉だけ集めたもので、お金をとらないといけない。しかし、「石が一緒に入った福袋」を電子書籍として売ろうとしているわけです。マーケットが成立しない気がするんですよ。
津田:出版業界があまりにもネットを意識しすぎているというか、ネットと同じ状況で勝負しようとすると大変なことが起きていく、ということだと思います。
(下につづく)
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