トップへ

刑法に定められた刑罰は「死刑」のみ・・・「外患誘致罪」ってどんな罪?

2014年07月11日 13:31  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

犯罪をおかせば、裁判を経て、懲役や罰金などの刑罰が科されることになる。だが、究極の刑である「死刑」を宣告されるのは、まれだ。殺人事件でも、死刑判決が下されるのは、極めて悪質なケースに限られている。


【関連記事:幼児を女性が「蹴り倒す」動画――渋谷駅で撮影された「児童虐待」衝撃の現場】



しかし、人を殺したわけでもないのに、有罪が確定すると、必ず「死刑」になる罪があるのをご存知だろうか。それは、刑法81条に定められた「外患誘致罪」だ。そこには、「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する」と書かれている。



日本の刑法に規定された数多くの犯罪のうち、刑罰が死刑のみというのは、この外患誘致罪だけなのだという。この珍しい罪は、いったいどんな場合に成立することになるのか。西口竜司弁護士に聞いた。



●日本国に対する「裏切り行為」を処罰


「刑法の第3章は、『外患に関する罪』を処罰しています。これは、日本国に対して外部から武力を行使させたり、外部からの武力行使に加担するなどして、我が国の存立を脅かす行為を処罰するものです。つまり、日本国に対する裏切り行為を処罰するものです」



このように西口弁護士は説明する。外患誘致罪は、刑法第3章の「外患に関する罪」のうちの一つなのだ。どんな罪なのだろうか。条文は次のとおりだ。



「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する」(81条)



西口弁護士は、この条文のそれぞれの文言を次のように解説する。



「まず、『外国』とは、外国の政府、軍隊、外交使節などの国家機関を言います。一般の外国人や外国の私的団体などは含まれない、とされています。



また、『通謀』とは、意思の連絡を生ずることをいいます。外国政府に働きかけ武力行使をすることを勧めたり、外国政府が日本国に対して武力を行使しようとすることを知って、武力行使に有利となる情報を提供する行為をいいます」



さらに、『武力を行使させた』とは、軍事力を行使させて我が国の安全を害することをいいます。必ずしも、戦争である必要はありません。具体的には、外国政府が、安全侵害の意思をもって、公然と日本国領土に軍隊を進入させ、ミサイル攻撃等を加えることをいいます」



西口弁護士はこう説明する。



だが、「本罪で事件になった例は、過去にありません」という。外患誘致罪は、死刑しか刑罰が定められていない特殊な犯罪だが、いまのところ、その適用を受けたケースはないわけだ。



その背景について、西口弁護士は「外交に対する配慮が働いているからだ、とされています」と述べていた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
2007年弁護士登録。知財、経済法事件など企業法務案件が専門だが、高齢者事案を中心に一般民事事件も広く取り扱っている。日本商標協会会員。辰已法律研究所専任講師。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/