2014年シーズンのGP2シリーズにカンポス・レーシングから今季から参戦している佐藤公哉は、第5大会シルバーストンのレース1は23位、レース2は20位と苦しい戦いを強いられた。決勝レース後、モマネジメントチーム兼レーシングチームであるユーロノバ・レーシングのオーナー、“タキ井上”こと井上隆智穂が公哉に話しかけるが、その様子が……(汗)。
●食事はまったくこだわらないんですけど
井上隆智穂(以下タキ):公哉くーん、今回はちゃんとしたレストランを用意できなくて申し訳ない! 美味いモノを食って精をつけてもらおうと思っていたんだけれど……。
佐藤公哉(以下公哉):いや、僕は食事にまったくこだわらないタチなので問題ありません。
タキ:シルバーストン周辺は、ホントにショボいレストランしかないんだよ。今回はトゥースターの街で、いつもの中華料理屋といつものバングラディシュ料理屋にしか行けなかったしな。
公哉:いえいえ、僕はガスステーションに併設されているようなコンビニエンスストアの「M&S」で、プラスチックみたいに硬い米粒のお寿司を買って食べるのだって、ぜんぜん問題ありません。正直、アレを食べないとイギリスに来た気がしないというか……。
タキ:……(汗)。
公哉:そもそも、僕は食事にあまりこだわっていません。土曜日には朝マックを買って食べましたし、レースウィークではなによりもアレがいちばん美味しかったですね。
タキ:……(汗)。まあ、鶏の胸肉を薦められて食べたり、間違ったアスリートメニューを信じるよりはマシだな! やはり、レーサーはエネルギーをつけるためにも、血と脂が滴るような牛肉を食わないとヤバイよな! でしょ?
公哉:そう思いますよ。
タキ:まあ、F1へ行くようになったら、大企業の役員たちと一緒に食事へ行く機会も増える。好き嫌いを言わずに、いまは修行と思ってなんでも食べないといけないよ。僕もそうだった。
公哉:はい。あとはビールとウイスキーがあれば、僕は満足です。
●あれ? 激おこぷんぷん丸?
タキ:……(汗)。ところでハナシは前後するけれど、シルバーストンのレースはお疲れさまでした!
公哉:……(怒)。
タキ:あれ?
公哉:……(怒)。
タキ:あれ? 激おこぷんぷん丸?
公哉:そりゃあそうですよ! ぜんぜん疲れていません! 今日(日曜日)のレースだって、左コーナーは普通に曲がれるのに、右コーナーはぜんぜん曲がれないって、どうやったらあんなクルマを作れるんですかね? おかげでレース開始早々に左前輪がボロボロでしたよ。これ、イジメですかね?
タキ:……(汗)。
公哉:昨日(土曜日)のレースだって、コーナーは滑りまくりですし、トラクションは無いですし。しかもシートが縮んでズレるなんて聞いたことないですよ!
タキ:激おこ……。
(ここで公哉が壁ドン)
公哉:しかもですよ! 不運だったとはいえ、前方のクラッシュで破片が飛んできてウインドウスクリーンが無くなって、ヘルメットにモロに風が当たるようになって……。頭が浮いて首の骨が折れるかと思いましたよ! ホント、心も折れる寸前でした! ピットレーン入口が見えるたびに、あそこに入ってラクになりたい、あそこに入ってラクになりたいと、毎周毎周、真剣に思いましたよ! その気持ち、分かってくれますか?
タキ:……(汗)。分かった……。
公哉:あ、すみません。ちょっと興奮しすぎました(汗)。
タキ:うんうん。
●ホントに大丈夫なんですか!?
公哉:かなり無理な姿勢で走り続けたせいで首は痛いし、背中は痛いし、腰は痛いし、さんざんな週末でした。ホント、こんなんでいいんですかね? このまま続けていくんですか? シーズン最後までこのままなんてことはないですよね?
タキ:うん、しっかりとやるから……。
(ここで公哉が再び壁ドン)
公哉:でも、開幕戦のバーレーンからずっとこの調子ですよ! バルセロナ、モナコ、レッドブルリンク、そしてシルバーストン。もうシーズンは半分が終わったのに、クルマにはまったく進化の兆しも改善の兆しも見られないじゃないですか!
タキ:……(汗)。まあ、タキ井上のドライビング指南が原因じゃなかったことだけはたしかだったよね……(汗)。あれ? 激おこ……。
公哉:タキさんの指南も多分にあるんじゃないですか? とにかく、ホントに心が折れそうですよ。
タキ:大丈夫! いまの成績が公哉くんの実力じゃないことは、カンポス・レーシングはもちろんビンチェ(ユーロノヴァ社長のビンチェンツォ・ソスピリ)も分かっているし、ライバルチームだってそう見ている。公哉くんに興味を示しているF1の連中だって、いまの段階ではまったく心配していないよ。これはホントだよ。大丈夫!
公哉:大丈夫、大丈夫って、ホントですか?
タキ:ホントだって! 心配しないで!
公哉:……。信じていいですか?
タキ:うん! とにかく、問題ははっきり見えているので、いろいろと手を尽くしている。たしかに改善の兆しが見えないという公哉くんの言葉はもっともだし、僕らもこれまで楽観視しすぎていた面はある。それは申し訳ないと思う。
公哉:あれ? タキさんらしくない、しおらしい発言ですね。
タキ:なに言ってんのよー。まだ僕のことを怪しくて胡散臭いおっさんだと思っていた?
公哉:はい! いまでもそう思っています!
タキ:……(汗)。
公哉:違いましたか?
タキ:うーん(汗)。まあ、とにかく公哉くんのレースも終わったし、僕のシルバーストンでの仕事も終わったし、F1のレースが終わって道が混雑する前に撤収して、ロンドン市内で美味いメシでも食おう! 日本料理屋? 中華料理屋? 公哉くんはなにが食べたい?
公哉:そうですね。早く撤収しましょう。でも、僕はこれからロンドンで別の用事があるので、タキさんはひとりでメシでも食っていてください! お疲れさまでした! 失礼します!
タキ:……(汗)。 なんだよ! 公哉くん、今回もつれないなー……。
(Kojiro Ishii)