2014年07月10日 12:51 弁護士ドットコム
「いま司法は国民の期待にこたえているか」。日本の民事司法のあり方について、政治家や学者などが、利用者の視点に立って議論するシンポジウムが6月20日、東京都内で開かれた。
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登壇した経済同友会の冨山和彦・副代表幹事は、事業再生ADRなどの「裁判外紛争解決手続」に触れたうえで、「紛争を効率的に解決・予防するという観点で、司法を幅広くとらえるべきだ」と話した。
司法サービスが重要な役割を果たしているという感覚は、社会で共有されていません。一方で、紛争リスクは、知らない間に世の中にどんどん染みわたっています。たとえば、これだけグローバル化が進めば、国際結婚もリアルな問題になってきています。そういうことが、いろいろな分野で起きています。
こうした状況では、司法を「広義」で捉えることが大事だと思いますが、企業の中でも、法律問題は「特殊領域」という空気が濃厚です。弁護士マターというと「専門領域」で、弁護士の意見を聞いてそれで決まりとか、法務の意見で決まるという不思議な世界があります。
お客さん相手でも、M&Aでも、労使でも、相手との関係は良いほうがいい。そういった相手との間に生じた問題をどう解決するかは、企業の日常的な経営マター、一般的マターとなっています。ところが残念ながら、日本の経済界では、法曹資格を持っている社長や専務や常務は、おそらく1%もいません。
もちろん、法曹資格者の人数の問題もあるのでしょうが、現実的にどんどん増している潜在的リスクに対して、サービスの供給が不均衡なのは間違いありません。
医療では、予防医療が大事だといわれていますし、入院に至るケースよりは、外来で済むケースや家で一般薬を飲んで済むケースが多い。司法でも、裁判に至るケースよりも、それ以前で済むケースが多いはずです。
医療は20年前とくらべると、かなりユーザー志向になっていて、入院のケースや大病院で働くお医者さんばかり想定するのではなく、予防医や家庭医などが一般に浸透していく方向性が出てきています。
ところが、そういう意味でいうと、民事司法は、サービス供給側の論理から必ずしも出ていない印象です。
また、日本は妙に「裁判内手続」と「裁判外手続」を峻別するところがあります。私どもがやっている会社倒産の問題でも、裁判内手続は法的整理と言われ、透明で立派なものだということになっている。
一方で、事業再生ADRなどは法的手続に乗っかってすごく透明にやっているのですが、私的整理だと何か不透明で、格落ちだと思われる。そんな傾向があります。
しかし、(法的整理も事業再生ADRも)どちらも弁護士が関わることですし、裁判の内か外かで峻別することに意味はない。大事なことは、利用者が幸せになることです。
これからは、司法をより広く捉えて、どうやったら紛争を効率的に予防し、効率的に解決できるか、その観点からいろんなものを組み直していくことが必要なのではないかと思います。
(弁護士ドットコム トピックス)