ポコノ・レースウェイで開催されてベライゾン・インディカー・シリーズ第11戦。500マイルの決勝レースをファン・パブロ・モントーヤ(ペンスキー)が制し、復帰後初勝利を飾った。4番手からスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)は、マシントラブルで序盤にリタイアとなった。
ポールポジションからスタートしたファン・パブロ・モントーヤはグリーンフラッグの直後にチームメイトで予選2位だったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)にパスされた。しかし、それは彼の望んでいたことだったという。トップを走れば大きな空気抵抗を受けるために燃費は悪い。ドラフティングを使って燃費をセーブし、レース展開を味方につけるチャンスを大きくしたいと考えていたのだ。
レース終盤、徐々にプッシュを始めたモントーヤは燃費のアドバンテージを手放したが、そのスピードはトップグループの誰にも劣っていなかった。がむしゃらに優勝を目指すパワーに対して、レースを大局的に見てチャンスを窺うモントーヤの戦いぶりは、実にベテランらしいものだった。
パワーに続き、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ)も積極的にレースをリードする戦いを行った。彼らがペースを作ったレースで、モントーヤはジリジリと3番手まで浮上する。
148周目、トップ3の中でいちばん先にカナーンがピットストップ。パワーとモントーヤは155周目に同時にピットした。コースに戻ったふたりはコンマ5秒以下の差を保って周回し、カナーンに差をつけた。
158周目、マシン・トラブルからグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が単独スピン。今日最初のフルコースコーションが出された。ここで3番手につけていたカナーンが大胆なギャンブルを打った。イエロー中に給油をし、最後まで燃費を持たせる作戦に出たのだ。ペンスキー勢2台にスピードでは叶わないと考えたのだろうか、短いコーションが出ればゴールまで給油せずに走り切れる。そこに勝機を見出した。ジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン)も同じ作戦を採用し、彼らはリスタート目前の164周目にもう一度燃料補給を行った。
165周目にレース再開。そして167周目のターン1、アウトから仕掛けようとしたモントーヤのフロントウイングと、ほぼ同じタイミングでマシンをアウトに振ったパワーが接触した。モントーヤのフロントウイング左側から翼端版が吹き飛んだ。しかし、この直後にトップに立ったのはモントーヤで、スピードダウンしたのはパワーの方だった。
このような接触では強度の低いフロント部を接触させた方が大きなダメージを受けるのが普通だが、今日はパワーが"リヤバンパー”に歪んだなどのダメージを受けて一瞬失速。モントーヤに先行されたすぐ後に2番手のポジションすらルーキーのカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)に譲ってしまったほどだった。さらにその2周後、パワーはエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)にもパスを許した。
それでもパワーはカストロネベスを171周目に抜き返し、優勝に向けてのチャージを再開した。そしてその直後、今シーズンのチャンピオンシップに大きな影響を与えるかもしれない事件が起きた。メインストレートでアタックをして来たカストロネベスに対し、パワーは二度のライン変更で応戦。これがブロッキングと判定され、ピットドライブスルーのペナルティをパワーは科せられた。当然優勝のチャンスはなくなり、彼はトップ3は確実と見られていたレースで10位でゴールするしかなかった。
トップグループは184周目にムニョス、185周目にカストロネベス、186周目にモントーヤがピット。カストロネベスがここで2番手に浮上した。燃費セーブ作戦のニューガーデンはモントーヤがピットしたことで186周目にトップに躍り出たが、194周目に給油に向った。彼は最終的に8位でのゴールとなった。ニューガーデンがピットするとトップはカナーンのものに。しかし、彼もまた197周目にピットに向った。カナーンの作戦は大失敗で、彼は11位でゴールを迎えた。
モントーヤは2番手に上がって来たカストロネベスに接近を許さず、2.3430秒の差をもって優勝。インディカーでは2000年以来となる通算12勝目を飾った。今季、ポールからの優勝はこのレースのモントーヤが初めてとなった。
「インディカーから長年離れていた僕の力を信じてくれた、ロジャー・ペンスキーに感謝する。いつ勝てるかはまったくわからなかった。本当に勝てるかさえわからなかった。しかし、シーズンの半分を過ぎたところで優勝できた。チャンピオンシップの可能性すら見えて来たんだから、来週のアイオワが楽しみだ」とモントーヤは語った。
2位はカストロネベス。チーム・ペンスキーはデトロイトでのレース2に次ぐ今年2回目の1-2フィニッシュ、シボレーの1位、2位独占は今シーズ3回目となった(デトロイトのレース2、テキサスでの1-2-3に続く)。
3位はムニョス。コロンビア人ルーキーは早くもロングビーチ、ヒューストンのレース1に続き、今シーズン早くも3回目の表彰台。昨年のインディ500での2位も含めれば、キャリア4回目のトップ3フィニッシュとなった。
4位はライアン・ブリスコ(チップ・ガナッシ・レーシング)で、今季の彼のベストリザルトとなった。5位は予選15位だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)。6、7位にはヒューストンで大活躍したシュミット・ピーターソン・モータースポーツのふたり、サイモン・ペジナウとミカイル・アレシンが入った。
佐藤琢磨は、予選4位からスタートで順位を落とした。「オーバーブーストでスピードが上がらなくなってしまった」からだった。しかし、そこから徐々にポジションを挽回。6番手を走っていたが、まだ1回目のピットストップさえ迎える前の25周目、ターン3で突然エンジンが止まり、ピットに惰性で戻って来た。トラブルは電装系のもので、そのままリタイアとなった。
ダブルポイントのレースでポイントリーダーのパワーが10位に沈み、ランキング2位につけていたカストロネベスが今シーズン5回目の表彰台となる2位フィニッシュ。パワーとカストロネベスのチャンピオンシップ・ポイント446点で並んだ。ポイント3位には今日6位でフィニッシュしたペジナウ。モントーヤはトップと55点差のポイント4位に浮上した。ポイント5位にはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)がつけている。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)