ペンシルバニア州にあるポコノ・レースウェイで開催されているベライゾン・インディカー・シリーズ第11戦。5日に行われた予選では、ファン・パブロ・モントーヤ(ペンスキー)がトップスピードをマークし、オープンホイール復帰後初のポールポジションを獲得した。プラクティスからトップ10に入っていた佐藤琢磨(AJフォイト)は、予選でも速さを見せ4位を獲得し、2列目から500マイルの決勝レースに挑む。
トリッキー・トライアングルの別名を持つポコノ・レースウェイでのインディカーイベントは2デイで開催。今日はプラクティス2回の後に予選が開催された。
全長2マイルのコースは三角形をのオーバル。しかも、3つあるコーナーはバンクも半径もどれひとつとして同じものはない。非常にユニークで、マシンセッティングもドライビングも難しいコースだと言える。
午前中のプラクティス1ではトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)がトップで、2番手はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。そして、午後のプラクティス2ではウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がトップに立ち、2番手にはルーキーのカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)がつけた。午前中のカナーンによる最速ラップは平均時速が221.344mphで、その時点で去年のポールスピードを上回っていた。午後になると、パワーは223.348mphにまでスピードを一気に上げた。
予選はインディライツのレースの後、夕方の5時に始まった。気温自体はプラクティス2の間と変わらなかったのだが、予選の後半にはほんの少しずつだが下がっていった。その小さな気温、あるいは路面温度の差がラップタイムに大きな影響を与えていたようだ。速いドライバーが遅い順番を偶然引き当てていたということもあるだろうが、予選が進むに連れてスピードは確実に上がっていった。
不運にもトップバッターとしてコースインしたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は、2ラップ平均が220.604mphだった。今週のディクソンはマシンを重い通りに仕上げられていないが、アタック順もまったく味方をしてくれていなかった。ディクソンのスピードを破って2人目のトップとなったのはエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)だった。スピードは221.019mph。その後、ルーキーのミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン)が221.221mph、ハンター-レイが221.950mphでトップに立った。しかし、まだまだスピードは上がっていった。
最初に222mph台に予選スピードを載せたのはエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)だった。彼は今日6番目にトップに立ったドライバーとなり、222.517mphはもう上回ることが不可能かとも考えられたが、昨年のポコノでのポールウイナー、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)が222.715mphを出してトップを奪った。
しかし地元のアンドレッティは2年連続PPを獲ることはできなかった。彼をトップから引きずり下ろしたのは佐藤琢磨だった。プラクティス1で5番手、プラクティス2で7番手につける好調ぶりを見せていた琢磨は、予選での計測1周目が222.804mphで、2周目は僅かにスピードダウンしたが222.793mphをマーク。2ラップ平均222.798mphでトップに躍り出た。
今年3回目、オーバルでは今シーズン初となる琢磨のPP獲得がなるかと期待されたが、2人後にアタックしたパワーが223.725mphという強烈なスピードを出してトップを奪った。琢磨のアタックに1mph近い差をつけたのだ。最後から2番目のアタッカー、ムニョスも223mph台の2ラップ平均を出した。パワーには及ばなかったが、彼は2番手につけた。
そして最後にコースインしたのがファン・パブロ・モントーヤだった。プラクティス1では6番手、プラクティス2では9番手と目立たないながらもコンスタントに上位につけていたモントーヤは、アタック1ラップ目が223.920mph! 2ラップ目も223.822mphで、両ラップともパワーの数字を上回り、今季初ポールポジションを獲得した。今年オープンホイールに復帰したモントーヤは、11戦目にしてPPへと手を届かせた。CART時代のものと合わせ、キャリアPPは15個目となった。CARTでの最後のPPは2000年のゲイトウェイ・インターナショナル・レースウェイで記録された。
「素晴らしいバランスのマシンになっていた。最後のアタッカーだったことは、くじ運の良さだった。アタック順は良い時も悪い時もある」とモントーヤは話した。
「チームメイトふたりが自分より前に走っており、アタック中にどんな問題が出ていたかを僕は自分が走る前に知ることができたから、対応や準備が可能だった。また、僕のマシンは彼らのものよりトリム・アウトされていなかった。僕らのセッティングがベストだったということでもあった」
モントーヤがトップに立ったことで、予選2位はパワー、3位はムニョスとなった。琢磨は最終的に4位。
「今日は遅いアタックが条件的に有利でしたね。それでも、僕らは自分たちに順番が回って来た時点でのトップに立てた。それは嬉しかったし、気持ちが良かった。最後までトップでいられたら良かったけれど、2列目のイン側は好いスタート位置だと思う。今年は500マイルに距離の伸ばされたレースですが、明日はずっと上位で戦い続けたい」と琢磨は意気込みを語った。
明日のグリッド2列目、琢磨の外側に並ぶ予選5位はアンドレッティ、6位はジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)。予選7~9位の3列目にはカストロネベス、カナーン、ハンター-レイが並ぶ。
前戦ヒューストンでのウイナー、カルロス・フータス(デイル・コイン)とサイモン・ペジナウ(シュミット・ピーターソン・ハミルトン)は、それぞれ予選20位と11位。昨年のポコノ・ウイナー、ディクソンは予選15位で、明日は後方からのスタートとなる。
プラクティス2でアクシデントを起こしたルーキーのジャック・ホークスワース(BHA)は予選に出場できず。ジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン)はアタック前のウォームアップラップでクラッシュしたため予選タイムなしとなった。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)