イギリスGPはケータハムF1チームにとって、ファクトリーがある第二のホームグランプリ(“第一”のホームグランプリはマレーシアGP)。しかし、シルバーストン・サーキットの木曜日、ケータハムのモーターホームにはそのような華やいだ雰囲気はなかった。なぜなら前日の7月2日、チームの創設者であるトニー・フェルナンデス(と彼のパートナー)が、スイスと中東の投資家グループにF1チームを売却したことが発表されたからである。
「聞いたのは、昨日(7月2日)。しかもプレスリリースで。そのプレスリリースも僕のところには送られていなかった」
7月2日、可夢偉はドライビングシミュレーターに乗るために、イギリス・リーフィールドのファクトリーに足を運んでいた。しかし、フェルナンデスがチームを新たな投資家に売却するという重要な知らせを、チームから直接聞くことはなかった。その胸中は察するに余りある。
「リリースを見た時は『やっぱりな』と。チームのみんなも発表はするんだろうなと思っていたけど、(首脳陣は)誰も何も言わないので、その日はみんな自分の仕事をしていた」
チームの将来も気になるが、日本人として気がかりなのは、可夢偉の今後だ。
「契約はオーナーが変わっても生きていると思うけど、正直まだよくわからない部分がたくさんあって、僕もこのチームがこの後、どういう方向で進んでいくのか知りたい。だいたい、僕だってまだいなくなる可能性もあるし。昨日、ファクトリーに2人(コリン・コレスとクリスチャン・アルバース)がいて、会う機会があったけど、まだそれ(自分の将来)について話せる雰囲気じゃなかった」
この日チームのモーターホームでは、秋の日本GPでデモランを担当することになっているナイジェル・マンセルと可夢偉による鈴鹿へ向けた対談が行われた。しかし、今の可夢偉はこれまで以上に、一戦一戦が重要な戦い。チームの将来、そして自分の未来が不透明なまま、可夢偉のイギリスGPは幕を開けようとしている。
(尾張正博/F1速報)