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ASKA被告人「保釈」――裁判所が決めた「保釈金700万円」は高いか、安いか?

2014年07月03日 17:41  弁護士ドットコム

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東京地裁は7月3日、覚せい剤や合成麻薬MDMAを所持した罪などで起訴されたASKA(本名・宮崎重明)被告人を保釈した。ASKA被告人が、勾留されていた警視庁東京湾岸署から出てくると、その光景はテレビニュースなどで大々的に報じられた。


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今回、ASKA被告人は保釈にあたって、700万円の保釈金(保釈保証金)を納付したことが報じられている。この保釈金の金額は、どのようにして決まるのか。また、700万円というのは他の事件と比べて高額なのだろうか。裁判官経験がある田沢剛弁護士に聞いた。



●保釈金は被告人に心理的プレッシャーを与えるもの


そもそも保釈とはどういった制度なのだろうか。田沢弁護士が解説する。



「被告人が公判や刑の執行のために確実に出頭することを保証させたうえで、身柄を釈放することです」



では、保釈金とはどのようなものだろうか。



「万が一、被告人が逃亡したり、証拠を隠滅することなどを防ぐため、心理的なプレッシャーを与えるものです。もし逃亡などがあれば、保釈金が没収されます」



逃亡などがなければ、納めた保釈金はいつか戻ってくるのだろうか。



「刑事訴訟規則91条1項によると、一定の条件のもとで返還されます。



1つは、そもそも身柄の拘束を意味する『勾留』そのものが取り消されたり、『勾留状』の効力が失われるケースです。無罪判決や刑の執行猶予などの判決が言い渡された場合が該当します。



もう1つは、被告人に実刑判決が言い渡され、刑事施設に収容されるケースです」



●事件の性質だけでなく、性格や経済力も判断材料に


では、保釈金の金額は、どういったプロセスで決まるのだろうか。



「最終的に裁判官が決めます。まず、保釈申請した弁護人と裁判官が面会して、保証金はどの程度を考えているのか、あるいはどの程度準備できるのかをやりとりします。他方で、裁判官は原則として検察官に保釈についての意見を求めます」



金額の判断は裁判官が下すことになるようだ。田沢弁護士はその基準を解説する。



「刑事訴訟法93条2項は『保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない』と定めています。



事件の性質や情状に加えて、証拠の証明力や、被告人の性格、経済力も判断材料になります。さらに、他の事件とのバランスや、家庭環境、就労状況なども考慮しながら決まります。過去の事例の集積も参考にするでしょう」



●一般人と比較すると相当高い、でも芸能人としては・・・


今回のASKA被告人の保釈金は700万円。同じ覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けた酒井法子さんの場合は500万円だった。一方で、詐欺罪で有罪になった小室哲哉さんは3000万円で保釈された。ASKA被告人の700万円は高いとみるべきか、それとも、安いとみるべきなのだろうか。



「一般人の場合と比較すれば、相当に高いものです。一方で、ASKA被告人のこれまでの経歴や推測される収入からすれば、むしろ低いのではないかとも考えられるところです。他の芸能人の同様の事件との均衡を考慮した結果ではないでしょうか」



保釈金の金額は、どうやら微妙なさじ加減で決まっているようだ。これまで有名人では、ライブドア事件の堀江貴文さんのように、3億円(一審判決の後増額されて5億円、二審判決の後さらに増額されて6億円)の保釈金を納付したケースもある。



今後、事件報道で保釈金のことを目にした場合、その金額に注目してみるのもいいだろう。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp