2014年07月02日 18:11 弁護士ドットコム
一糸まとわぬ姿でトレーニングする「全裸ヨガ」が、ニューヨークで話題になっている。男女同じクラスで受講するコースも用意されていて、全裸の男女が同じ空間でトレーニングに励んでいる動画がネットで公開されている。
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米ネットメディアによると、全裸ヨガのインストラクターは「裸でヨガをすれば、自らの身体に対する嫌な気持ちから解放され、より寛容になれるし、自分自身や周囲とより深くわかり合えるようになる」と話している。性的な意味で他人に触れることは禁止で、もしそうしたことが起きたら、退出させるとしている。
この夏、日本のあるトレーニング施設では、女性限定の「水着ヨガ」が開催されるという。そう遠くない将来、「全裸」スタイルが日本にも上陸するかもしれない。もしそうなった場合、インストラクターと受講者全員が同じ空間で全裸になることに、法的な問題はないのだろうか。矢澤利典弁護士に聞いた。
「日本において、ヨガ教室でのトレーニングを全裸で行った場合、公然わいせつ罪(刑法174条)が成立するかどうか、問題になるでしょう」
公然わいせつ罪になるかどうかのポイントは、どこにあるのだろうか?
「文字通り、『公然』と『わいせつな行為』がポイントです。この二つの要件をみたした場合、公然わいせつ罪が成立します」
素朴な疑問として、会員制のヨガ教室は「公然」と言えるのだろうか?
「ここでの『公然』とは、不特定または多数の者が認識することのできる状態だと解釈されています(最高裁昭和32年5月22日決定)。
ポイントは『認識される可能性』でも公然になるということです。そうなると、会員制の教室内でのトレーニングも公然になるでしょう。不特定多数の客を勧誘し、教室内の行為を見る機会を与えているわけですからね」
もうひとつの「わいせつ」はどうだろうか?報道によると、アメリカの教室では「性的な接触があれば追い出す」というルールのようだが・・・。
「『わいせつ行為』とは、性欲を興奮刺激または満足させるもので、正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものとされています。
ようするに、一般の社会常識から見て、性欲を興奮させ、性的羞恥心を害するものかどうかという観点から判断されます」
それでは、「全裸ヨガ」はこれに当たるのだろうか。
「価値の多様化が進んでいるとはいえ、公共の場所で全裸になることについては、浴場などの限られた場合を除いて、抵抗を感じる方がまだまだ多いのではないでしょうか。
こうした現状を踏まえて考えると、全裸でのヨガは、たとえ性欲を満たす目的ではなかったとしても、正常な性的羞恥心を害するということになり、『わいせつ行為』とされる可能性は高いと思われます」
参加者が「まさか全裸ヨガが違法だと思わなかった」と主張したら、どうだろうか?
「その行為が適法と信じた『相当な理由』があれば、例外的に故意が否定されるという判例もありますが、現在の社会常識に照らせば、全裸ヨガが法律上許されると信じたことに『相当な理由』があるとは考えられません。
結局のところ、現在の日本社会においては、全裸でのヨガ教室の参加者には、公然わいせつ罪が成立すると考えられます」
日本に「全裸ヨガ」が上陸するためには、まず、日本人の「性的羞恥心」が大きく変わる必要があるということのようだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
矢澤 利典(やざわ・としのり)弁護士
平成19年弁護士登録。熊本県弁護士会において、消費者委員会、刑事弁護センター委員会、公害環境委員会(委員長)等に所属する。取扱の多い案件は、家事事件(離婚、事件)、消費者事件、交通事故等の損害賠償事件、破産事件、刑事事件など。
事務所名:コスモス法律事務所
事務所URL:http://www.cosmos-law.com/