2014年07月02日 16:41 弁護士ドットコム
「イ〇ンのT〇PVALUは原産国、 生産者(国)がどういう訳かラベルに表示してありません」「セブンプレミアムは生産者が明記してあります。安心してお買い求めください」――。あるセブンイレブンの店舗で5月上旬、こんな内容のポップ広告が張り出されていたことがわかり、大きな騒ぎになった。
【関連記事:半沢直樹のマネ? 「しまむら」店員への「土下座強要」は法律的にどうなのか?】
イオンは5月中旬、「トップバリュには生産者表示が出来ない理由があるといった誤解を、消費者に対して与えかねない」「ポスターで例示された商品には原産国を表示する法的義務はない」と抗議。5月下旬に、セブン-イレブン・ジャパンから謝罪を受けたと発表した。
このポップ広告はフランチャイズ店のオーナーが独自に作ったもので、現在は撤去されているという。今回は、消費者に「イオンの商品に欠陥がある」と、受け止められかねない内容だったが、自社の商品販売のために他社の商品の落ち度を指摘するような宣伝手法は問題ないのだろうか。石川直基弁護士に聞いた。
「広告は本来、事業者が自由に行えるものです。ただ、景品表示法は、商品の内容について、実際のものよりも著しく優良と誤認される表示や、事実に相違して他の競争事業者のものよりも著しく優良と誤認される表示を、『不当表示』として禁止しています」
今回のような、他社の製品と比べるような広告も、この不当表示に該当するのだろうか。
「不当表示に該当する可能性があり、ガイドラインが設けられています。比較広告が不当表示に当たらないためには、(1)内容が客観的に実証されていること、(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用していること、(3)比較の方法が公正であることが、必要とされています」
今回の広告手法は、このガイドラインに照らすと、どう判断できるだろう。
「セブンイレブンのフランチャイズ店の比較の方法を、再考してみましょう。比較対象の商品に原産国が書かれていないことが事実であり、広告に嘘がないとしても、それだけでOKとはなりません。この表現が公正かどうかが問題となります。
原産国の表示が不要な商品を持ち出して、『イオンの商品には原産国がどういう訳かラベルに表示してありません』とポップに表示することは、公正でしょうか。
イオンが法令に違反しているか、法令に違反していないとしても不当に表示をしていないのだと、一般消費者に誤解させる可能性があります。したがって、これは公正さに欠けるように思われます」
石川弁護士はこのように指摘する。
「もっとも、『自社商品が原産国表示をしているのに、比較対象の商品は原産国表示をしていない』と指摘すること自体が、問題なのではありません。原産国を表示しないことは法令に違反しないということを指摘しつつ、『消費者のニーズをより追求した結果、自社商品は原産国を表示している』と表現すれば、よかったのではないでしょうか」
今回の広告も、もう少し配慮した表現であれば、ここまで問題になることはなかったということだろう。流通にかかわる多くの事業者に参考になるケースではないだろうか。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
石川 直基(いしかわ・なおき)弁護士
1998年弁護士登録。民事・商事・家事・行政・刑事各分野を取り扱うほか、雪印乳業食中毒事件、茶のしずく石鹸事件などの消費者製品被害弁護団に参加している。2013年10月から内閣府消費者委員会食品表示部会委員。著書「基礎からわかる 新・食品表示の法律・実務ガイドブック」(共著、レクシスネクシス・ジャパン 2014)
事務所名:米田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yoneda-law.com/