2014年07月01日 11:50 弁護士ドットコム
学校や会社にあるトイレの個室に弁当を持ち込んで、ゆっくりランチタイム。仲間の輪に入れない「ぼっち」の人にとって、「便所飯」は落ち着いて過ごせるつかの間のひとときなのかもしれない。
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インターネットの掲示板でも、初めて「便所飯」を体験した大学生が「意外といいな。学食の席全部開いてなくても待たなくていい」と、書き込んでいた。また、ある高校生は「リア充の会話を少しでも聞きたくないんだよ」と打ち明けていた。
しかし、人で混み合う昼休みのトイレで、長時間個室を独占すれば、他の人が使えなくなってしまう。学校や会社のトイレで「便所飯」をしている人がいた場合、強制的にやめさせることはできるのだろうか。中川彩子弁護士に聞いた。
「学校や会社に所属している人であれば、当然、建物内のトイレを使用することはできますし、トイレの個室でご飯を食べること自体は違法行為ではありません。そのため、『便所飯』自体を一律に禁止することは難しいでしょう」
中川弁護士はこのように述べた。では、「便所飯」をやめさせることはできないのだろうか。
「もし、『便所飯』が、他人に迷惑をかける行為にまで発展している場合、学校や会社が管理権限に基づいて、『便所飯』を禁止することはできるでしょう」
他人に迷惑をかけるというのは、どのような場合だろうか?
「やはり、長時間個室を占拠した場合ですね。他の人が用を足すことができなくなってしまいますので。また、食べかすを落としたままにしたり、ゴミを片づけなかったりした場合も、衛生的に問題となるので、禁止できるでしょう」
学校・会社が禁止する場合、どんな方法があるのだろうか?
「まずは、張り紙などで『便所飯』の禁止を周知することですね。それにもかかわらず、『便所飯』が行われた場合は、行っている人に退去を求めたり、それでも出ていかない場合は、刑法の不退去罪(刑法第130条後段)を適用することも、理論上は考えられます。
しかし、あくまで個室内で行われていることですので、強制的にやめさせるのは、あまり現実的ではありません。長時間の個室の占拠はしない、ゴミはきちんと持ち帰るなど、モラルをどれだけ徹底させられるかの問題になるのではないでしょうか」
そもそも、そんな風に周囲に問題視されれば、落ち着いて過ごすのは難しくなるだろう。どこか他に、ゆったり過ごせる場所が見つかればいいのだが・・・。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
中川 彩子(なかがわ・あやこ)弁護士
中小企業の企業法務や相続、離婚などの身近な法律問題を中心に幅広い案件を取り扱う。近年、特に相続・事業承継に力を入れており、円滑な相続・事業承継の実現のために地方紙連載やセミナー等で活動中。
事務所名:弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
事務所URL:http://www.shibata-law.jp/