2015年F1ではセーフティカー出動後のリスタートでスタンディング方式が採用されることが決定したが、ドライバーから安全性について懸念の声が挙がっている。
FIAは26日、2015年F1レギュレーションの変更点を発表、セーフティカー出動後のリスタートでスタンディングスタート方式を採用することなどを正式に認めた。
昨年のF1テレビ視聴者数が減少したことが明らかになり、チームはF1のショー的要素を高めるための案について協議を行っている。その結果、セーフティカーが出動した後のリスタートでは、現在のローリングスタートよりもポジションの変動が期待できるスタンディング形式を採用するとの提案がなされた。この案は、F1コミッションで承認された後、世界モータースポーツ評議会会合で正式に採用が決まった。
FIAの声明には以下のように記されている。
「セーフティカー後のリスタートはグリッドからのスタンディングスタート形式で行われる。スタンディングスタートは、セーフティカーがスタート(あるいはリスタート)の2周以内に出動した場合、またレースの残り周回数が5周に満たない場合には行われない」
しかし何人かのドライバーたちは、スタンディング再スタートになることで今までよりも危険が増すと考え、懸念を抱いている。
ロータスのロマン・グロージャンは次のようにコメントした。
「リスタート時にタイヤを交換できるのかどうか分からないが、タイヤ交換が許されないなら厳しい状況になるだろう。古く冷え切ったタイヤでスタートするわけだから」
「ショー的要素を改善する必要はあるけれど、別のやり方の方がいいかもしれない」
「他の誰よりもドライバー自身がショーやオーバーテイクを愛している。でも僕らは危険な状況は望んでいない」
マクラーレンのジェンソン・バトンも、スタンディング・リスタートはショーの面では効果をもたらすだろうとしながらも、非常に危険な状況になり得ると懸念している。
「新しいタイヤでスタートする場合はいいが、残り5、6周の時点でリスタートになり、タイヤが磨耗し切っていて、そのタイヤに熱を入れてプッシュしなければならないとしたらどうだろう。そうするとスタートの蹴り出しでかなり苦労する。そういう状況でたくさんのマシンが一斉にひとつの方向に向かって走るというのはとても難しい状態になり得るし、事故につながる可能性がある」
「確かにテレビ的にはいいアイデアだろうが、ピットインしなければならないなどの、タイヤについての規則も定めるべきだ」
一方、スタンディング方式でのリスタートになると、レースをリードしてきたドライバーがあまりにも大きな不利益を被るとの意見もある。
レッドブルのダニエル・リカルドは、スタンディング再スタートは人為的すぎ、不公平であると述べた。
「あまりフェアなアイデアとは言えないと思う」とリカルド。
「スタンディングスタートでは順位が変わる可能性がより大きくなるから、興奮度が増すかもしれない。でも僕は、あまりにも人為的すぎると思う」
「スタンディングスタートになると(トップから)3位や4位に落ちる可能性がある。それはレースをリードし、ギャップを稼いできたドライバーにとって大きすぎる損失だ」
メルセデスのニコ・ロズベルグとレッドブルのセバスチャン・ベッテルは、シンプルに最速のドライバーが勝つようなシステムを望んでいると述べた。
ロズベルグは、この規則変更は「あまりにも極端だ」との考えを示した。
「スタートがファンにとって最も興奮する時間のひとつであることは理解している」
「でも行き過ぎだと思う。僕は、この50年行われてきたような純粋なレースが好きだ。(レース中に)もう一度スタートするような大きな変更は全く望まない。変だよ。『今のままでいるべきだ』というのが僕の正直な意見だ」
ベッテルは、ショーの面ばかりを考えてはならないとの意見を示している。
「レースの面とショーの面においてそれぞれどういうメリットがあるのか、議論の余地がある」
「F1は昔も今も、常にモータースポーツの最高峰だ。勝つのは最速のドライバーでなければならない。つまり、ドライバーが自分の技を発揮する余地があるような規則を作るべきだ」