GAZOO Racing 86/BRZレース第5戦は十勝スピードウェイを舞台に6月30日(日)に開催され、ポールポジションからスタートした谷口信輝(KTMS 86)が一度もトップを譲らず、今季3勝目をマークしている。
今年初めてGR 86/BRZレースが本州を離れ、北海道・十勝スピードウェイで開催。蝦夷梅雨と言われるほど昨今の北海道は雨に見舞われ続けてきたが、レースウイークのセッション中はほぼドライコンディションが保たれた。十勝とオートポリスのレースはボーナスポイントとして通常の5割増となるポイントが与えられるため、有効ポイント制度が採られているにも関わらず、24人のチャンピオンを本気で目指す有力どころが集っていた。
土曜日には専有走行が2セッション行われ、セッション1では山野直也(CABANA BS μ 86)が、そしてセッション2では谷口がトップ。もちろんこの時点でレコードタイムは1秒以上も更新されていた。開けて日曜日の午前中に行われた予選は、ブリヂストンのRE-11A 4.0がリリースされてから初めて挑むドライコンディションということもあり、山野や前回3位の久保凛太郎(CG ROBOT86wNC)や蒲生尚弥(ASICS Blue 86R)らの動向も注目された。
だが、BSユーザーたちの野望をまたもヨコハマの谷口が打ち破った。2周目にいきなり1分36秒197をマークしてトップに浮上。その後、いったんピットに戻った谷口に対し、最初のアタックで36秒456にまでしか達しなかった山野は禁断の再アタックをかけるも、意地で36秒433にまで短縮するのが精いっぱい。そんな山野を筆頭とするライバルをあざ笑うかのように、谷口も終了間際にコースイン。そして、36秒197を出してダメ押しをかけることになった。
「1周でいいかなと思ったんだけど、もうちょっと行ってみようかな~と思って、もう一発! チームからは35秒台狙えって言われたんだけど、まぁ(笑)。ただコンマ2秒の差は、絶対じゃないと思う」と谷口が語ったのに対し、「ちょっと走り過ぎたので、決勝が心配」と、むしろ山野の方が悲観的。3番手には蒲生が、そして4番手には青木孝行(ケーエムエスADVAN 86RC)がつけ、羽根幸浩(メタルラボSPEX YH86)、久保までが36秒台をマークした。
予選終了から2時間あまり。早くも決勝レースのスタート進行が開始される。24台のマシンがすべてグリッドに並ぶ頃には、それまでサーキット上空を覆っていた灰色の雲に切れ間ができて、陽も差すように。好スタートを切ったのは山野で、1コーナーのインから谷口をかわそうとするも、並ぶのが精いっぱい。むしろしっかりガードを固められて失速し、その脇を蒲生にすり抜けられてしまう。その結果、1周目のオーダーは谷口、蒲生、山野、青木、羽根となり、逆に久保は2ポジション落としてしまう。しかし接戦だったのは1周目だけで、3周目には早々と2秒のリードを奪った谷口は、そのまま逃げ続けた。
その一方で2番手争いは最後まで激しく、まずは山野が3周目に蒲生をパス。続いて青木も蒲生に襲いかかり、9周目に先行を許してしまう。だが、この3人に羽根を加えた集団は最後まで離れることはなかった。そして、最終ラップの1コーナーで青木が山野に迫るも、直後に痛恨のブレーキミスが。2台は接触し、山野こそポジションを留めたものの、青木は蒲生にかわされてしまう。そんな激しいバトルを尻目に、谷口は13秒差での圧勝に。ファステストラップも記録し、ポイントフルマークに成功する。
「結果的に楽勝にも見えるかもしれないけど、アドバンの威力を見せつけたかったんで。何はともあれ、ボーナスポイントの十勝で勝てて良かった。次の富士はD1グランプリと重なるので出られないんで、この1勝はかなり大きいと思う」と谷口。もちろん、ランキングのトップも死守している。
また、レース後には一波乱も。なんと4位でゴールの青木が、レース後の再車検で失格。タイヤの残り溝が一輪のみとはいえ、1.5mm以上という規定を満たしていなかったのだ。激しいバトルによって偏摩耗したためと思いたいが……。これにより、羽根以下の順位がひとつずつ繰り上がり、5位は久保が中盤の挽回によって獲得している。
(はた☆なおゆき)