前日に引き続きヒューストンのストリートコースで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズ第10戦。29日に行われたレース2の決勝は、サイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン)が勝利し、今季2勝目を挙げた。佐藤琢磨(AJフォイト)は、終盤に単独クラッシュを喫し、ヒューストンの2レースはいずれもリタイアとなった。
蒸し暑さの凄まじいヒューストンで開催されたシリーズ第10戦は、今年最もエキサイティングなストリートファイトとなった。そして、その激戦を制したのは、3番グリッドからスタートしたサイモン・ペジナウだった。
昨日のレース1ではポールポジションからスタートしながら、ブレーキトラブル発生もあって16位に沈んだペジナウだったが、レース2ではほぼ完璧なレースを戦い抜き、今シーズン2勝目、キャリア4勝目を挙げた。
レース序盤はポールシッターだったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がトップをキープした。レッドタイヤでは彼の速さが際立っていたのだ。しかし、1回目のピットストップでほぼ全員がブラックタイヤにスイッチすると、ペジナウが最速の存在に変わった。一気にカストロネベスとの差を縮め、49周目にトップを奪う。
トップに立ったペジナウは独走し、ピットストップを行ってもその座を譲ることはなく、90周目のゴールまで突っ走った。
「凄まじいレースだったが、僕たちのマシンは最高だった。ブレーキ、トラクション、グリップ、すべてが良かった。ドライバーとして、これ以上は望めないマシンになっていた」
「ハードタイヤでのスピードに自信を持っていた僕たちは、実際のレースで考えていた通りの強さを発揮し、シーズン2勝目を挙げた。チームメイトが2位フィニッシュ。僕たちのチームはこれまでより高いレベルに到達したと思う。とても嬉しいことだ。次戦のポコノでも優勝を目指すよ」とペジナウは語った。
終盤にはペジナウのチームメイトで予選2位だったルーキーのミハイル・アレシン(SMPレーシング)が2番手に浮上して来た。彼はタイヤの内圧が少し下がっていたこともあり、初優勝を狙ったアタックをチームメイトに仕掛けることはなかった。そんな状態でもアレシンはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)を引き離してみせた。
追いかけていたパワーは、ゴールを目の前にしてマシントラブルから壁にヒット。90周のレースの89周目に3位に浮上したのは、ルーキーのジャック・ホークスワース(BHA)だった。最後尾の23番グリッドからスタートした彼は、最後のピットストップを52周目と少し早めに行うこととしたチームの作戦が大成功で、目の前から多くのマシンがピットに向う中でポジションを上げていった。
しかし、彼が表彰台に手を届かせたのは幸運からだけではなかった。レース終盤、彼はファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)、さらにはパワーとバトルを展開し、それを戦い抜いて3位を掴み取ったのだ。特に、モントーヤとのバトルは凄まじく、クラッシュもせず、しかもポジションを明け渡すことなく走り切った力は素晴らしかった。
昨日のレース1でもルーキーふたりが表彰台に立ったが、レース2でもアレシンとホークスワース、ふたりのルーキーが表彰台に並んでいた。
シュミット・ピーターソン・モータースポーツは初めての1-2フィニッシュを達成。ホンダエンジンはヒューストンでの2レース制覇に、レース2では1-2-3フィニッシュという花を添えた。ホンダは今シーズン5勝目を挙げ、優勝回数はシボレーと肩を並べた。
佐藤琢磨は予選10番手からスタートし、序盤には15番手まで順位を下げた。それはインディカーのレースコントロールによるミスジャッジが原因だった。スタート直後のシケインに琢磨はムニョスと並んでアプローチしたが、ムニョスが寄せて来たためにシケインをショートカット。
そこで順位をアップさせず、ターン5でムニョスをパスした琢磨は、さらにトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)をパス。その直後にレースコントロールから「ムニョスより後方へ下がれ」との指示が出された。しかし、ムニョスは琢磨と競り合った時の9番手ではなく、12番手まで順位を下げていた。
琢磨は指示を受け入れ、ムニョスの後ろへと自ら下がったが、その際に更に何台かのパスを許したために15番手となったのだった。それでもレッドタイヤでのペースが悪くなかったため、琢磨は1回目のピットストップを終えると10番手まで挽回していた。
50周の時点では、6番手までポジションアップ。さらに上位を狙えるかに見えていたが、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)との接触などがあってまたも後退。そして、75周目に縁石への乗り上げ過ぎてバランスを崩し、壁にヒットしてレースを終えた。
「スタートは良かったのに、ムニョスとの件ではインディカーと見解が違っており、更に順位を下げていたムニョスより後ろまで下がるよう指示されました。そこからトップ10へと返り咲き、6位まで上がった時には、上位フィニッシュができる感触を掴んでいたのですが、リスタートでマルコ・アンドレッティがインから接触されたりがあって、またも順位を下げました」
「最後はフラストレーションもたまっている状態で、縁石に高く乗り上げ過ぎてマシンが宙に浮いてしまい、壁にヒットしました。マシンにはスピードがあり、去年のシーズン中盤戦のような状態に陥っているわけではありません。しかし、不運が多く、自分たち以外の要因によって結果を残せないレースがとても多くなっています。マシンの状態は良いので、次のポコノこそ良いレースを戦い、シーズン後半戦はポイントを重ねていきたいと思います」と琢磨はチームの地元で成績を残せなかったことを悔しがっていた。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)