2014年06月29日 14:50 弁護士ドットコム
梅の果実が、スーパーに並ぶ季節になった。その実を目にするだけで、さわやかな香りと酸味が、口の中によみがえってくるという人は多いだろう。中国の『三国志演義』にも、武将が喉の乾きを訴える部下たちに「もうすぐ梅林がある」と伝え、喉の渇きを紛らわせるというエピソードがある。
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そんな梅の代表的な調理法に「梅酒」がある。梅酒を作るための講座も、全国各地で人気だという。だが、日本でお酒を造るためには、免許が必要だったはず。お酒となれば「税金」もかかってくるはずだ。梅酒を自分で勝手に作ることは、ルール違反にならないのだろうか。久乗哲税理士に聞いた。
「日本でお酒を製造しようとすると、酒税法で定められた酒類製造免許が必要になります。酒税は、明治時代の日清・日露戦争の際に戦費を調達するために導入されました。それ以来、日本では、免許制度を通じて製造者を管理し、安定した酒税収入を確保しています」
久乗税理士は酒税制度の背景をこう説明する。では、個人でお酒を作った場合はどうなるのだろうか。
「自分で楽しむために、いわゆる『どぶろく』(発酵させただけの白く濁った酒)を免許なしに製造した場合、酒税法違反になるのかが1980年代に裁判で争われました。
憲法13条の幸福追求権が争点になりましたが、最高裁は1989年、自分で消費するためであってもお酒を作ってはいけないという判決を下しました。その理由は、国の重要な財政収入である酒税を確保するためだとされました」
どうやら、自分で消費するためでも認められないということだ。ただ、自宅で梅酒を作っているという話を耳にすることは多い。
「焼酎に梅を漬けて、梅酒を作ることも、新たにお酒を製造したことになります。ただ、アルコール分が20度以上で、酒税がすでに課税されているお酒の中に梅などを混ぜることは、自分で楽しむためであれば、『例外』として認められています」
ただ、その場合でも、他人に売るのはダメだったり、ぶどうや米を混ぜるのはダメだったり、何かとシビアなルールになっているようだ。酒税は、国家にとってそれだけ「うまみ」があるということなのかもしれない。
【取材協力税理士】
久乗哲(くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名:税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
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