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インディカー第9戦ヒューストンはコロンビア旋風! ルーキーのヒュータスが初優勝

2014年06月29日 12:00  AUTOSPORT web

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表彰台を独占したコロンビア人のヒュータス、モントーヤ、ムニョス
ヒューストンで開催されているベライゾン・インディカー・シリーズ第9戦。決勝直前に雨が降る波乱のレースを、ルーキーのカルロス・ヒュータス(デイル・コイン)が制し、インディカー初優勝を飾った。2位にファン・パブロ・モントーヤ(ペンスキー)、3位にカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)が入り、コロンビア人ドライバーが表彰台を独占。佐藤琢磨(AJフォイト)は、序盤の濡れた路面で速さを見せトップに立つも、クラッシュを喫しリタイアに終わった。

 コロンビア出身の23歳、カルロス・ヒュータス。今年の開幕戦セント・ピーターズバーグでインディカーデビューをしたばかりの彼は、9戦目にして初勝利を手に入れた。

 19番手スタートだったヒュータスは、グリッドでエンジンストールしたグラハム・レイホール(RLLR)しか後ろにいない22番手まで後退。ウエットコンディションの序盤はおおいに苦しんでいた。しかし、路面は着々と乾いていき、ヒュータスのペースも徐々に上がっていった。

 佐藤琢磨が周回遅れのミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン)の強引なアタックによって32周にしてリタイアさせられ、俊足ルーキーのルカ・フィリッピ(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は少ないチャンスを活かそうと気合いが入り過ぎて37周目のリスタートでクラッシュを演じた。

 昨年ここで優勝しているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)でさえもがドライビングミスにより単独クラッシュし、ポールシッターだったサイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン)、ディクソンのチームメイトのチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ)のふたりが不運にも巻き添えを食った。

 マイク・コンウェイ(エド・カーペンター・レーシング)も予選17位から10番手までポジションアップする走りを見せたいたがタイヤバリアに突っ込み、ポイントリーダーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)はペースが上げられず、スピンして周回遅れに陥った。

 まさにサバイバルの様相を呈していたレースで、ヒュータスは千載一遇のチャンスを掴んだ。33周目の琢磨&アレシンによるアクシデントで2回目のピットストップを行ったヒュータスは、続けて出された37周目からのフルコースコーション(フィリップのクラッシュ)で、レース再開直前の41周目にもう一度ピットインして給油を行った。

 この先は、ヒュータスの前を行くドライバーたちが次々とピットイン。トップ争いを繰り広げていたジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)、セバスチャン・ブルデー(KVSHレーシング)の3人、さらにはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)やマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)といった面々までが59周目にピットに向った。

 今日のレースはスタート前の降雨により「1時間50分で終了」とインディカーによって決定、アナウンスがされており、この時点でレースはもう20数分しか残されていなかった。トップにはジャスティン・ウィルソン、2番手はヒュータスとデイル・コイン・レーシングによる1-2体制が築かれた。

 しかし、ウィルソンは最後にピットストップをしたのが28周目だったため、驚異的な燃費走行を実現してはいたが、ゴールまで無給油はほぼ不可能だった。彼が勝つたには長いフルコースコーションが必要だった。

 燃費が持たないと判明した時点でウィルソンはペースアップ。ヒュータスは引き離されたが、74周目にウィルソンはスプラッシュを受けるためにピットへと飛び込んだ。

 ここでヒュータスはトップに躍り出た。彼の後方には母国のヒーロー、ファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)が上がって来ていた。しかし、そのモントーヤはトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)からの攻撃を受けており、さらにその後ろにはレース終盤になって急激にスピードアップしていたレイホールが這い上がって来ていた。

 77周目、近頃ラフなドライビングが目立つライアン・ブリスコ(チップ・ガナッシ)が、7番手と大奮闘を見せていたセバスチャン・サーベドラ(KV/AFSレーシング)に体当たり。これで今日5回目のフルコースコーションが発生。ヒュータスは燃費の面では救われたが、モントーヤたちの接近を許す上、トップでリスタートを切るのは今回が初めてだ。トップを守り切れるかどうかは難しいところだった。

 その彼をまたしても救う事件が起きた。レイホールがリスタートでの加速タイミングを見誤り、カナーンに激しく追突! カナーンはスピンしてストップ。リスタートは切られなかったのだ。そして、このリスタートの前にレースはスタートから1時間と50分が経過。新しいラップには入れないこととなり、イエローフラッグとチェッカーフラッグが同時に振られ、ヒュータスの勝利が決定した。

 モントーヤが2位。3位でゴールしたのはレイホールだったが、カナーンを撃墜した彼にはすぐさま30秒のペナルティが課せられ、3位には最後尾スタートだったカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)が入った。コロンビアン3人による表彰台独占! 過去にはブラジル人たちがインディカーを席巻したことがあったが、近頃ではコロンビア人ドライバーの進出が著しく、彼らは成績も残すようになっている。サッカーワールドカップでも同じ時間に試合が行われ、勝利を挙げたコロンビアンたちは、表彰台で三色の国旗を掲げて喜んでいた。

 デイル・コインの2台目で走るヒュータスは、あまり目立たない存在として出場を続けていたが、デビュー2戦目のロングビーチで10位フィニッシュ、デトロイトでのレース1(シリーズ第6戦)では8位フィニッシュしていた。派手な走りではないが、着実さを持ったドライバーだ。これで今シーズンのインディーカー・シリーズは、9戦目にして7人目のウイナーを誕生させた。ルーキーによる優勝は、実に2006年のソノマでのマルコ・アンドレッティ以来だ。

(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)