第92回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム。練習走行・予選の3日目、最終日となる現地時間27日は、全長20kmのコースを3分割したプラクティスコースのうち、山の中腹部に設定されたミドルセクションでEVモディファイドクラスの練習走行および予選が行なわれ、ミツビシの新型マシン『MiEVエボリューションIII』を駆るグレッグ・トレーシーが2分25秒65でクラストップタイムをマーク。増岡浩が2分31秒03で2番手を記録し、火曜日から始まった練習走行および予選の全セッションでワンツーを堅持し、いよいよ悲願の総合優勝に挑む。
同コースのミドルセクションは、EVモディファイドクラスがレースウィーク最初の自由参加のセッションで走行したセクション。コースサイドには奇岩が迫るダイナミックな景観が特長で、スタート後にはタイトなヘアピンが連続して現れ、急な上り坂をステアリングを左右に大きく切り込みながら走行するテクニカルなコース設定となる。昨日予選となったボトムセクション、その前日水曜に走行したアッパーセクションと比べるとスピードレンジは全体的に低めだが、俊敏かつ正確なハンドリングなくしてタイム向上は見込めない。そんななか、ドライコンディションでの走行を終えたミツビシの増岡は、マシンもドライバーも最高の状態に仕上がったと自信を言葉にした。
「今週2回目の走行となったミドルセクションでは、改めてS-AWCの効果を実感しました。タイトなコーナーが続くコースでS-AWCは非常に有効で、他のマシンが曲がらずに苦労するようなきついヘアピンコーナーでもスムーズに駆け抜けていくことができました。狙ったラインを高いスピードを保ったまま正確にトレースすることができるため、ドライバーは意のままにコントロールしているという自信と安心感を持って走ることができるのです」
「日曜日の決勝レースでは、トレーシー選手と供に電気自動車クラスの優勝、さらには総合優勝も視野に入れ全神経を集中して走ります。本番で100%力を出し切ることがプロとしての役目。体調、精神状態ともに最高の状態ですので、決勝はフルアタックで行きたいと思います」
充実したレースウイークを過ごし、良い感触で決勝当日を迎えることができそうなミツビシだが、この日の走行では増岡が2本目の走行中、ヘアピンのバンプでフロントが抜けるアクシデントで、そのままコースを外れてディッチに突入するアクシデントを経験。幸いマシンにダメージはなく走行続行となったが、ワンミスで勝敗が決するヒルクライムイベントは、そうした運を引き寄せる必要も出てくる。
現状では、アンリミテッドクラスにオリジナルマシン『ノルマM20 RDリミテッド』を持ち込むロマン・デュマが、全セクションでわずかにミツビシ陣営を上回るタイムを記録しているが、天候などの影響もあり、勝負はまさに「最後までやってみなければ分からない」というのがパドックの空気だ。
昨年スタートで雨に祟られたミツビシ同様、例えばデュマがコースオフするなどして赤旗が出た場合、その直後を走るトレーシー、増岡は止まらざるを得ず記録タイムはなし。しかし、EVはその構造上、タイムスケジュールを勘案してもギリギリ1トライしかできない。そうなると、赤旗の影響を受けにくいEVモディファイド3番手スタートの田嶋信博が勝つ、というシナリオも考えられる。天候、前走車など最後は運。それがパイクスの難しさでもある。