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まさかの予選1-2、白幡メカニックが語るウイリアムズの強さの秘密

2014年06月27日 16:00  AUTOSPORT web

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オーストリアGPの決勝前、パドック裏で検討を讃え合うマクラーレンの今井エンジニア(左)とウイリアムズの白幡メカニック(右)
オーストリアGPの予選、ウイリアムズの白幡勝弘メカニックは確実な手応えを感じていた。金曜の練習走行からバルテリ・ボッタスが4番手に入り、予選直前の3回目の練習走行ではトップタイムをマークしていたのだ。

「やっぱりメルセデスが速いけど、良ければ3、4、5位くらいに行けるかなという実感はあった」

 しかし、実際には誰もが驚く2番手。大本命のルイス・ハミルトンが2度のアタックをミスし、そのミスによる黄旗の影響をニコ・ロズベルグが受けるという、ウイリアムズとしてはラッキーが重なる展開ではあった。それでも、ボッタスも若干、コースをはみ出すミスをしながら、2番グリッドを獲得していた。

「1-2というのは正直なところ驚きですよね。僕はボッタス担当なので、予選でトップに立った時には「おお! このままいけるか!」と思っていたので、ボッタスが予選でミスった時は「ああ~」ガクッと。そしてマッサがタイムを更新した時には「ちきしょー!」と(笑)。正直、マッサに抜かれた時はショックでした(苦笑)。でも、チームとしては素晴らしい結果。だからまあ、すごく贅沢な瞬間でしたね」

 白幡メカニックは、ウイリアムズで今季はボッタス車のナンバー2メカニックとして、クルマのメンテナンスを任され、ピットストップ時には右フロントタイヤを担当する。2006年から所属しており、今年で9年目を迎える白幡メカ、現在ではほとんどのF1チームに日本人スタッフが所属しているとはいえ、レースチームのメカニックは白幡氏しかいない。

 昨年、年間ポイントわずか5点でランキング9位に終わった名門ウイリアムズ。だが、昨年は実質のチーム代表がフランク・ウイリアムズから娘のクレア・ウイリアムズに変わり、技術部門のトップにルノー、マルシャで手腕を発揮したパット・シモンズを迎えた。そして今季はフェリペ・マッサの加入とともにエンジニアのロブ・スメドレーを獲得。昨年から始まったチーム改革は着実に実を結び、昨年中盤以降、徐々に速さを発揮し始め、今年は復活間近の勢いを見せている。白幡メカはその変化を現場でどう、感じているのだろうか。

「クレアやトップの方たちがオーガナイズしているわけですけど、それぞれのポジションのキーパーソンがまず替わりましたよね。去年パット・シモンズが入って、今年からロブ・スメドレーが加わって、その他にも何人かスタッフが入って会社の中の構成が変わった。やり方自体ががらっと変わったということではなくて、今までかゆいところに手が届いていなかった部分が、今は細部まで届いてきているという印象を受けます」

その具体例を白幡メカは以下のように挙げる。

「首脳陣がクルマの開発から走らせるまでを決定しているわけですが、それが細かいところまで考えられている。僕たちが一番最後の部分で、開発された部品を手にとってクルマを組み立てるわけですけど、それが『おっ、これは気が利いているなあ』とか、『あ、これはいいじゃん』というものが増えましたね」

「今年の新しいレギュレーションになっても、作業自体は同じ内容で単純にクルマが変わっただけなんですけど、時間のオーガナイズとか部品が提供されてくるタイミングとか、たとえばファクトリーに帰ったらすぐに次の作業の準備とか、次のレースの準備ができているとか、会社自体の作業の流れがすごく整備されてきた。その働きやすくなっている、というのが全部に影響していると思います」

 もちろん、今年のメルセデス・パワーユニットが協力なこともあるだろうが、それでも、オーストリアではフォース・インディア、マクラーレンの同じメルセデス勢に先行する速さを見せた。ウイリアムのクルマ、FW36は中高速コーナーの多いサーキットや、ウエットコンディションに弱点を抱える一方、カナダやオーストリアのような縁石を使うストップ&ゴーのサーキットに強みを見せる。FW36はダウンフォースが少ない反面、4輪のサスペンションがそれぞれきちんと作動する、足回りの良さが定評となっている。

「レースになったらどっちが勝ってもチームとしてはOKです。まあ、個人的にはボッタスが勝って1-2だったら最高ですけど(笑)」と決勝前に離していた白幡メカ。ボッタスの最初のピットストップ時間は2.1秒と驚異的なタイムで、一時、メルセデスの1-2を防ぐ2番手でコースに戻ることができた。結果は3位に終わったものの、ボッタスにとってはF1初表彰台を獲得する、うれしい結果となった。

 まだ2年目ながら、すでにフライングフィンの継承者として、次期チャンピオン候補と器と評されるボッタス。白幡メカも「彼は才能ありますよ。良いドライバーです」と太鼓判を押すように、今季のウイリアムズ、そしてボッタス&白幡メカがもっと大きな注目を浴びる日は、とても近い将来なのかもしれない。