今宮純氏がオーストリアGPで輝いたドライバーを採点。22人ドライバーのなかからオーストリアGP「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視してチェック。
(最高点は☆5つ)
☆ セバスチャン・ベッテル
ベッテル=苦悩する4冠王、あれほど速かった低速コーナーでチームメイトとの維持速度が違うのだ。旋回開始点から終了点までラインワークに誤差は見てとれないのにそう映る。オフブローイングによるダイナミック・ダウンフォースが欠け、本人は「ダウンシフト時の不安定性」をこぼす。悩みを抱え込んだままのターンインに王の苦悩を見た。
☆☆ 該当なし
☆☆☆ ニコ・ロズベルグ、セルジオ・ペレス、パストール・マルドナド
ロズベルグ=二人の心理ゲームはさらに奥深いゾーンに突入した。得点メリットを意識するニコは予選Q1まで鳴りを潜め、Q2で一気にトップに。相手の性格からこれに呼応し、限界アタックに出るのを読み、ルイスがミスする可能性を誘ったわけだ。決してずる賢くはない。クレバーな心理ゲーム戦略にここでも勝った。
ペレス=カナダGPの一件以後、ヒール・イメージがあるが彼の長所はレース・ロングランでのタイヤ管理の我慢強さ。ソフト29周+ソフト26周+スーパーソフト16周、6位でチームに貢献。
マルドナルド=今年ベストグリッド13位、グロジャンが走らぬE22に気力が萎えても彼はプッシュを続けた。その攻撃心で入賞あと二歩の12位(ルノーPU勢2位)、やれる限りのことをやりきった。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン、フェリペ・マッサ、ニコ・ヒュルケンベルグ、ダニエル・リカルド、フェルナンド・アロンソ、小林可夢偉
ハミルトン=Q3アタックでの2コーナー・スピン。あれは衝撃的(GP2伊沢拓也君もびっくりしたとか)。誰よりも深いブレーキングで初日から攻め、さらに彼は3mほど奥へ……自己限界に挑戦。リヤロックするや瞬時にスピンを"止め"、クラッシュしなかったミリセカンドの対応は"予知能力"のなせる技。
マッサ=スメドリーとともにここでPPを狙っていたマッサ。アンダーステア傾向コースでフロントの切れを優先、明らかな“予選セッティング"だった。前輪の発熱性を高めた分、後輪の摩耗度は進む。中盤のソフトでロングスティント・カバーできず、メルセデス勢に対し序盤スティントを引っ張るしかなかった。予選重視で臨み、保守的なレース戦略を選択した結果だ。
ヒュルケンベルグ=アップデートが入り、そのセットアップ確認に時間を要した。で、予選10位となったが9位ゴール、今年全戦順位アップレースで連続入賞中の超安定ぶり。
リカルド=レッドブル・メンバー4人でただ一人生き残った。スタート1コーナーでアウトに出ざるを得ず、苦しい展開が続いたものの終盤にヒュルケンベルグをセクター2でパス。直線スローなRB10でコーナー勝負する彼のいさぎよさ。
アロンソ=初日からあちこちでオーバーランを繰り返すのは珍しいこと。ミスではなく、現状F14 Tのリミットを探る行動だ。マティアッチ代表はピットウオールで見物するよりも彼がいかに奮闘しているか、自分の足でコースを見て回ってはいかが(キミの言い分も理解できるはず)。
小林=チルトンを見ると最近のマルシア戦力向上が著しいのがよく分かる。マシンとの戦力差が広がり、小林はここで「エアロ&ブレーキング」設定で対抗。トヨタ時代からブレーキング応用スキルが評価されていただけに、それを駆使して直近ライバルに挑むしかない現状だ。相棒に予選で1秒差、ビアンキに肉迫しレース序盤はリード。チーム側は1回ストップを託し最長55周スティントに変更。が、これは物理的に無理。
☆☆☆☆☆ ダニール・クビアト、バルテリ・ボッタス
クビアト=20歳伸び盛り、全員同じ条件と言っていい“初レッドブルリンク"で、素早くコースをマスターするタレントを見せた。FP3ではメルセデスPU(パワーユニット)勢に割り込む堂々4位、ロズベルグに先行(!)。2コーナーで定点観測中、センチ単位で正確な“エッジライン"を毎周キープしていたのはベッテル以上。
ボッタス=強いメンタルが光る。スタートで3番手に落ちるも1コーナー立ち上がりでロズベルグをとらえ、中間加速力で2位を取り戻した。やられたらすぐやり返す、慌てずに相手の動きを見きった反応力。
☆なし 他11人
(今宮純)