2014年06月21日 11:51 弁護士ドットコム
ノートパソコンやタブレット端末、スマートフォンの普及が進むなか、ネット通信用に「モバイルルーター」を持ち歩く人は多い。最近では通信速度のアップにともない、家に固定回線を引かずに、ネット利用はモバイルルーターが主という人もいるようだ。
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そうしたケースで問題となるのが「電波」の問題だ。ショップ店員から「ご自宅は電波の届くエリア内です」という説明を受けて契約したが、実際には電波状況が悪く通信できなかった――。ネット上には、そんな相談が散見される。
自宅で通信できないなら買わなかった。解約したい。そんな風に考えたときに壁となるのが「解約金」だ。モバイルルーターの契約は様々な「縛り」が設けられていることが多く、中には、契約後すぐだと高額な解約金を請求されるケースもある。
自宅はエリア内と説明を受けたのに、実際には使えなかったというようなケースでも、契約どおり解約金を支払わなければならないのだろうか。消費者問題にくわしい上田孝治弁護士に聞いた。
「モバイルルーターや携帯電話は、一般的に『エリア内でも通信ができない』ことがありえますし、利用規約等にもそのような注記がなされています。
ショップ店員が『自宅がエリア内である』と言っても、それは自宅での通信を保証してくれたわけではありません。仮に自宅がたまたま圏外であったとしても、店員が『事実と異なることを告げた』というのは難しいでしょう。また、事業者側が債務を履行していないと主張するのも難しい。
したがって、利用者側が契約を一方的に解約することは難しいと思われます」
すると、キャンセルはできないのだろうか?
「もし、ショップ店員が『自宅で通信ができる』『通信ができないときにはキャンセルに応じる』と断言したなら話は別ですが、そのようなケースはまれでしょう」
最近では、2年~1年の「縛り」を受け入れないと、月額費用が大幅に上がるケースが多い。契約する側にとっては、ずいぶんと厳しい話に思える。
「そうですね。いくらモバイルとはいえ、自宅で圏外だと契約自体がほとんど無意味になるケースもあります。そこで、契約直後の段階で、実際に自宅が圏外であることが確認できれば、事業者が解約料なしのキャンセルに応じるケースは少なくありません。
総務省の『利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会 電気通信サービス利用者の利益の確保・向上に関する提言 平成23年12月』でも、『移動体通信サービスにおいても、自宅がエリア外で不通となっていた場合に、個別に契約解除に応じる措置が取られている場合があるとの報告があった』とされています」
ケースバイケースで、ペナルティなしの契約解除に応じてもらえる場合もあるということだ。ただ、そういった対応が保証されているわけではない。
上田弁護士は「無用なトラブルを避けるためには、エリア内でもつながりにくい場合があることを踏まえ、レンタル等のお試しサービスを利用して、電波状況を確認しておくほうが良いでしょう」とアドバイスしていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/