前戦カナダGPで、ついにメルセデスAMGに土が付いた今季のF1。しかし、その敗因はパワーユニットのトラブルであり、そのトラブルさえ発生しなければ、やはり圧勝だったはずです。そのくらい、メルセデスAMGの速さは圧倒的です。
その強さ速さは、2003年以来11年ぶりの開催となるオーストリアGPでも継続されるのでしょうか? 初日の走りを見る限り、その答えはYESです。
フリー走行1回目(FP1)のトップタイムはニコ・ロズベルグ、2回目(FP2)はルイス・ハミルトンが最速でした。もちろん、いずれもセッションもメルセデスAMGのワンツー。FP1のロズベルグこそ、3位のフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)との差は0.3秒でしたが、FP2のハミルトンは、同じく3位だったアロンソに0.928秒もの大差を付けました。1周70秒程度のサーキットでの1秒差は、あまりにも大きい。この結果を見るだけでも、メルセデスAMGの圧倒的優位は揺るぎそうにありません。
ロングランでもメルセデスAMGは他を圧倒。やはり1周あたり1秒かそれ以上速いペースで周回を重ねました。ソフトタイヤでも、スーパーソフトタイヤでもです。さらにデグラデーションも、ラップタイムを見る限りはほとんど無さそうで、やはり今回も圧勝……しかも、全車を周回後れにしてもおかしくはないほどの性能差がありそうです。
3番手争いは今回も熾烈です。その候補の筆頭として挙げたいのは、フェラーリです。特にアロンソは1発のタイムもさることながら、ロングランのペースも優秀。デグラデーションの傾向もあまり見られません。ライコネンも30周あまり走ったソフトタイヤで、メルセデスAMGに匹敵するタイムを記録しています。彼らはスーパーソフトではあまり多くの周回を行いませんでしたが、少なくとも“フェラーリはソフトタイヤを上手く使えている”ということは言えそうです。
3番目のチームとなりそうなのが、意外と思われるかもしれませんがフォースインディアです。フォースインディアのふたりは、1発のタイムでは揃って下位に沈みましたが、ロングランのペースはフェラーリらに匹敵しています。しかも彼らはソフトでもスーパーソフトでも、デグラデーションをあまり発生することなく周回。前回に続いて台風の目になるかもしれません。
ウイリアムズもここに食い込んできそう。チームはバルテリ・ボッタスにソフト、フェリペ・マッサにスーパーソフトを履かせてロングランを実施。前述の2チームと同様のペースで周回しました。ただ、それぞれ若干のデグラデーションが発生している気配があり、ここが心配なところです。
フェラーリ、フォースインディア、ウイリアムズの3チームは、順番こそ付けましたが非常に僅差。レースの展開次第で誰が表彰台を得てもおかしくはないと思います。
地元グランプリのレッドブルは、これらのチームからは若干遅れた5番手という評価。ロングランのペースは0.2~0.5秒程度劣っている印象です。レッドブルリンクは高低差が大きく、アクセル全開率も高く、直線も長いサーキット。ゆえにパワーユニットの性能が、成績を大きく左右すると思われます。つまり今季についてはメルセデス製パワーユニットを使うチームが優勢なはずで、開幕よりは改善しつつあるとはいえ、ルノー製パワーユニットを使うレッドブルにとっては辛いところでしょう。
メルセデスのパワーユニットを使うもう1チーム、マクラーレンは1発のタイムこそまずまずですが、ロングランは良くありません。しかし、特にジェンソン・バトンは、ソフトタイヤで行なったロングランで、走り出しから徐々にペースを上げ、最終的なラップタイムが2秒近く速くなっています。この傾向を鵜呑みにして良いのなら、カナダGPのように、終盤急激に追い上げる……という展開があるかもしれませんが、他のメルセデス製パワーユニットユーザーに比べて、そのメリットを活かしきれていないという印象です。
なお、ウイリアムズが発表したデータによれば、1周あたりの燃料消費量は1.4kg。レースは71周で争われますから、ギリギリ足りるという計算……しかしレース前後の周回を考慮すると、レース中に若干量燃費をセーブする必要があるでしょう。また、天候も気になるところ。山岳地域にあるレッドブルリンクは、初日のように天候が変わりやすいはずで、予報が晴れでも空模様が急変することもありそうです。咄嗟の判断力が問われる場面が出てくるかもしれません。
メルセデスAMGに次ぐ3位が誰なのか? 今回のレースではその点が最大の注目点になります。まずは予選の結果を見てみましょう。
(F1速報)