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<STAP問題>小保方さんは「懲戒解雇」か「諭旨退職」か――二つの処分の違いは?

2014年06月20日 11:41  弁護士ドットコム

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「STAP論文」で研究不正を認定された、理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーに、どんな処分が下るのか、注目が集まっている。


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処分内容を検討している理研の懲戒委員会は、5月8日の発足時に「おおむね1カ月の審議」で正式処分を出すとしていた。この間、小保方さん側が弁明書を提出するなど動きがあったものの、すでにこの「1カ月」は過ぎている。



理研の就業規定によると、研究不正が認定された場合の処分は、「懲戒解雇」か「諭旨退職」が原則とされている。これらは一般の会社でも行われる処分だが、いったいこの2つはどう違うのだろうか。労働問題にくわしい靱(うつぼ)純也弁護士に聞いた。



●「懲戒解雇」と「諭旨退職」はどこが違う?


「実は、懲戒解雇も、諭旨退職も、法律で定義された言葉ではなく、厳密な意味で区別されているわけではありません。懲戒処分として従業員を失職させる点では同じで、法律的な手続きや有効性も同様と考えられています」



懲戒処分としては同じということだが、言葉の見た目はずいぶん違う。特に諭旨「退職」という言葉からは、自分の意思で職をやめるようなニュアンスも感じられるが・・・。



「『退職』という言葉が使われていますが、諭旨退職はあくまでも『懲戒処分』として退職させるものです。通常の退職(依願退職)とは全く異なります。



理研の就業規定にも、『退職願の提出を勧告し、即時退職を求める。これに従わない場合は懲戒解雇とする』とあります。



つまり、勧告に従わなければ、懲戒解雇ということで、実質的には解雇と同様と考えられますね」



2つはどこが異なるのだろうか。



「懲戒解雇の場合は退職金などが支給されないことが多いのに対し、諭旨退職の場合はその全部または一部が支給されるなど、従業員が受ける不利益が懲戒解雇と比べて緩やかになっていることが多いようです。ただ、それぞれの内容は、各社の就業規則によりますので、実質的にほとんど同じという場合もあります」



●重大な処分のためには「弁明の機会」が必要


つまり、懲戒解雇が一番厳しい処分で、諭旨退職はそれに次ぐ処分というわけだ。一般的にいうと、諭旨退職は、どんな時にどんな条件で行われる処分なのだろうか?



「諭旨退職にしうる事由は、あらかじめ就業規則に定められている必要がありますので、一概に言えませんが、一般的には、長期間の無断欠勤や悪質なセクハラ、横領、暴行などの犯罪行為の場合ですね。



諭旨退職処分を行うための条件は、あらかじめ就業規則に諭旨退職事由が定めされていることや、従業員本人に弁明の機会が与えられていることなどが必要です。



また、諭旨退職の処分を行うためには、原因となった行為の内容が、それが業務に及ぼした影響なども考慮したうえで、従業員を排除しなければならないほど重大である必要もあります。なお、従業員の行為と処分内容とのバランスが重要という点については、懲戒解雇でも同じです」



STAP論文をめぐって「不正行為」を認定された小保方リーダーは、どんな処分を受けることになるのか。懲戒解雇か、諭旨退職か、それとも、例外的にそれ以外の処分になるのか。懲戒委員会の裁定が注目される。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
靱 純也(うつぼ・じゅんや)弁護士
大手銀行、製薬会社勤務を経て2004年弁護士登録。交通事故、労働事件、債務整理、企業法務などに幅広く対応。気軽に相談できる弁護士を目指し無料法律相談に力をいれている。
事務所名:あゆみ法律事務所
事務所URL:http://www.ayumi-legal.jp/