14日~15日に行われた第82回ル・マン24時間耐久レースで、LMP2クラスの50号車モーガン・ジャッドをドライブした井原慶子は、大混戦のLMP2クラスを戦い抜き9位完走。日本人はもとより、アジア出身の女性ドライバーとして初めてのル・マン完走を果たした。
あくなきモータースポーツへの情熱をもち、レースに挑戦することで夢をもつことの大切さを伝えるべく活動を続けている井原は、今回のル・マン24時間が3回目の挑戦。過去2年間はガルフレーシング・ミドルイーストからの参戦だったが、チームはトラブルが発生することが多く、井原はこれまで完走を果たすことができなかった。
しかし、昨年途中に井原はOAKレーシングに移籍。今季はその紹介もあり、ヨーロッパのGTレース界では強豪であるフランスのラルブル・コンペティションに移籍した。ラルブルは昨年までLM-GTEアマクラスの最速チームだったが、今季はLMP2に挑戦。ELMSを中心に活動しているが、井原はそのドライバーの一員として戦っている。
井原によれば、チームはピエール・ラグ、リッキー・テイラーというふたりの男性ドライバーに、現代の耐久レースで要求されるスピードの部分を任せ、井原には雨や日没、早朝などトリッキーなコンディションを任せる作戦を組んだという。井原は「ステディにどんな環境でも安定してコンスタントに走ることを評価してもらって加入した」ため、ドライバーの個性を判断し、名門らしい作戦を組んだのだ。
そのため、井原はレース序盤のレインコンディションや、陽が傾いたタイミングでドライブ。他のふたりのドライブ時にタイヤバースト等ありピット回数が多くなったものの、しっかりと走りきりLMP2クラス9位で完走。日本人はもとより、アジア出身の女性ドライバーとして初めてのル・マン完走という偉業を成し遂げた。
「チーム代表含めて、私を雨や難しい時に乗せるのは不安もあったと思いますが、信じて乗せてくれたのは嬉しいですし、何回も優勝している名門だからこそ、初のLMPでもチェッカーまでマシンを運ぶようにしてくれました」とレース後井原は笑顔で語った。
「全コーナー、全ラップで気を引き締めるようにしていて、絶対に成果を出そうと思っていました。3度目の挑戦で完走できましたし、達成感があります。ル・マンのファンって、みんなが完走した人を讃えてくれるので、それがすごく嬉しかったです」とル・マン初完走の瞬間を楽しんだという。
ただ、井原の情熱にとって、このル・マン24時間完走は最初の一歩だ。「今回で何が足りないか分かったと思います。もっともっと体力が必要なので、ちゃんと調整していきます」と、次なるチャレンジに向け気持ちを新たにしている様子だった。