91年の長き伝統を誇る“世界三大レース”のひとつ、第82回ル・マン24時間耐久レースは現地時間の15日15時に、長い戦いにチェッカーフラッグが振り下ろされた。序盤から波乱が相次いだ今季のレースは、マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ組2号車アウディR18 e-トロン・クワトロが優勝。アウディが5年連続でレースを制した。
トヨタ、ポルシェ、アウディという3メーカーの対決に沸いた2014年のル・マン24時間。12日の予選では、中嶋一貴駆る7号車トヨタTS040ハイブリッドがポールポジションを獲得し、快晴の下26万3300人もの観衆を集め、14日15時の決勝スタートを迎えた。しかし、開始から1時間半でレースはいきなり波乱の展開となる。突然降り出した強い雨の影響で路面は一気にウエットコンディションとなり、3メーカーのワークスカーのうち8号車トヨタTS040ハイブリッド、3号車アウディR18 e-トロン・クワトロを巻き込む多重クラッシュが発生。セーフティカーが導入される荒れた幕開けとなる。
そんな中で、大きなトラブルに見舞われることなくトップのまま夜を迎えたのは7号車トヨタ。次いで、ロッテラー、トレルイエという日本育ちのドライバーたちが快走をみせる2号車アウディが続いていく。ル・マン最高峰クラス復帰戦となるポルシェ勢は、細かなトラブルもあり中盤までは2台の後塵を拝していった。
序盤の混乱の後レースは落ち着きをみせていくが、7号車トヨタと2号車アウディによる首位争いは僅差。片方にトラブルがあれば簡単に順位はひっくり返る展開だった。そんな中、先にトラブルが発生したのは7号車トヨタ。中嶋一貴のドライブしていた午前4時59分に、突如電気系トラブルでストップ。ル・マン24時間ではピットに帰り着かなければ修理を行うことはできず、必死にピットと通信を行い修復を敢行するも、無念のリタイアとなってしまった。
トラブルの魔の手は、トップに立った2号車にも襲いかかる。夜も明けた午前8時3分、2号車はピットに入った際にガレージに入れられてしまう。ターボチャージャーの交換で23分間の作業を強いられ、一気に3番手まで後退してしまった。
これでトップに浮上したのは、走行1日目に大クラッシュに見舞われ、実質的に新車を一晩で組み上げることになった1号車アウディだ。深夜にインジェクターのトラブルに見舞われ修復を強いられたほかは順調に走行していたが、首位浮上後の11時、1号車にもトラブルが。この修復の間、残り3時間で今度は20号車ポルシェ919ハイブリッドが浮上していく。しかし、その後方には同一周回で2号車アウディがつけていた。
2号車を駆るロッテラーは、逆転勝利に向けて20号車ポルシェを猛追。しかし、アンカーとしてマーク・ウエーバーが乗り込んだ20号車ポルシェは、残り2時間というところでまさかのトラブルに。僚友14号車も同様にトラブルに見舞われてしまう。これで2号車アウディが首位を奪還。1号車アウディが2番手、序盤のクラッシュから粘りの追い上げをみせていた8号車トヨタが3番手まで浮上した。
そのまま最後まで上位の順位は変わらず、2号車アウディのファスラー/ロッテラー/トレルイエ組が2012年以来のトップチェッカー! 2位に1号車が入り、ル・マン24時間で無類の強さをみせるアウディがワン・ツー。レース前は劣勢を予想されていたが、その下馬評を跳ね返す強さをみせつけた。トヨタは8号車が3位表彰台を獲得したが、7号車のトラブルが悔やまれる結果に。なお、ポルシェ14号車はチェッカー間際にピットアウトしゴール。復帰戦を締めくくった。
LMP2クラスは、チェッカーまで3台が同一周回で争う展開に。JOTAスポーツのサイモン・ドラン/ハリー・ティンクネル/オリバー・ターベイ組38号車ザイテック・ニッサンが優勝を飾った。LM-GTEプロクラスはAFコルセのジャンマリア・ブルーニ/トニ・バイランダー/ジャンカルロ・フィジケラ組51号車フェラーリ458が優勝した。
日本勢では、特別枠のガレージ#56から参戦したニッサンZEOD RCはレース序盤でリタイアし、本山哲は決勝でドライブできなかった。井原慶子が乗り込んだ50号車モーガン・ジャッドはLMP2クラス9位、総合15位で完走している。中野信治が乗り込んだ日本のチーム・タイサンのフェラーリ458は、粘りの走行を続けLM-GTEアマクラス8位でチェッカーを受けた。