第82回ル・マン24時間耐久レースに、環境技術を志向した特別枠“ガレージ#56”から参戦しているニッサンZEOD RCだが、開始から23分後にアルナージュ先でストップ。リタイアを喫してしまった。
ZEOD RCは、マシンに搭載された電力駆動と1.5リッター3気筒直噴ターボエンジンの駆動を切り替えることが可能。EVモードで走行した後、エンジン駆動に切り替え回生を行い蓄電、再びEVモードで走ることができ、サルト・サーキットの1周を電力のみで走ることを目標としていた。
すでに予選の段階で、電気モーターによる時速300kmでの走行や、電気モーターでサルト・サーキットを1周走るという目標を達成。ZEOD RCのピットはひとつずつ目標をクリアするとともに喜びに沸き立っていた。総合順位を競うものではないが、ちょうどLMP2クラスとLM-GTEプロクラスの間となる予選タイムをマークし、14日の現地時間15時のスタートでも、24時間レースの完走を目指し走りはじめていた。
しかし、スタートを務めていたウォルフガング・ライプのドライブで6周目に入っていたZEOD RCは、アルナージュ先でストップ。オフィシャルに押され安全な場所に移動されたものの、ル・マン24時間ではコース上でストップした場合、ドライバーが自力でマシンを修復しピットに戻らなければならない。特別枠からの参加とは言えスポーティングレギュレーションは変更することは許されず、工学系の知識が豊富なライプでも修復はできず。リタイアすることになってしまった。
ピットでその様子を見守っていた本山哲に話を聞くと、「駆動系トラブルみたい。まだ原因ははっきり分からないけど……」と悔しさを隠せない様子だった。自身は2012年にニッサン-デルタウイングをドライブしていた際、クラッシュした車両を必死に直すトライをした経験があるだけに、本山の言葉には重みがあった。
「違うトラブルだったらピットに戻って直せると思うけど、駆動がまったくかからなくて走れなかった。早すぎる。もったいないよね……」
来季はニッサンGT-R LMニスモで、現在激しく争われているLMP1の戦いに身を投じることになるニッサン。この悔しさをバネに、すでに来季の戦いに気持ちを新たにしている様子だった。