2014年06月13日 20:00 弁護士ドットコム
「STAP細胞」の論文不正をめぐる問題を受けて、理化学研究所が設置した外部有識者による改革委員会は6月12日、東京都内で記者会見を開いた。改革委は、小保方晴子ユニットリーダーが所属する「発生・再生科学総合研究センター」(CDB)を解体することなどを求める提言書を発表した。
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この提言書では、CDBの竹市雅俊センター長や笹井芳樹副センター長の責任を厳しく問う一方で、理研の野依良治理事長の責任については、特に言及していない。
しかし岸輝雄委員長は会見で、「CDBの再興を先導したあと、理事長はご自分で、いろいろなことを十分、お考えになると確信している」と述べ、野依理事長自身が近い将来、「辞任」という選択をする可能性が十分にあるという見解を示した。
記者会見の質疑応答のうち、理研の組織改革に関する主なやりとりは、以下の通り。
――提言は、非常に厳しい内容だと思うが・・・
岸輝雄委員長:我々から見るとリーズナブル(合理的)だ。
――改革委員会の中で一番議論になったのはどこか?
岸委員長:提言の「第3」(STAP問題はなぜ起きたか―STAP問題発生の原因分析)は、我々の一番の任務だから、議論しないわけにはいかなかった。調査委員会とCDBの自己点検検証委員会が終わっていて、我々は再発防止のことだけをやれば良いと、安易に考えて引き受けたが、現実には内容を知らないと何もできないという局面にぶちあたった。
結局、調査委員会や自己点検委員会と近い仕事にずいぶん時間を使った。そこから最終的に導かれたのが、「第4」(再発防止のための改革の提言―研究不正の再発防止策として)。リーズナブルというか、合理的に導かれたと思っている。
――委員の意見が割れたところは?
市川家國委員:意見が割れたというよりも、時間の経過とともに、いろんな不正がだんだん明らかになってきたことで、問題の深刻さが変わり、議論が交錯したというのが正しいと思う。
竹岡八重子委員:最初は温度差があり、最後のほうになって一致してきた。
市川委員:分子生物学を知っている委員と、そうじゃない方とで、感じ方が違ったというところがあるんじゃないかと。そのうち情報が集まるとともに、我々の考え方が固まってきた。
――厳しい処分と、再現実験に参加させることと、不正調査の関連性については、どう考えるか? 早く処分が出て、懲戒免職になってしまうと、再現実験や不正調査に影響が出るのでは?
岸委員長:それは配慮しないで考えた、ということにしている。配慮すると、まったく前に進めないので。調査委員会、自己点検委員会、懲戒委員会のあとに我々があるわけではなくて、全部パラレル。現状だけから言えること、なすべきことを言った。今のところ、相矛盾するのはわかるが、一応、度外視して考えるということだ。また、そのときでも、(STAP細胞の)有無に関して、理研はなんらかの回答をしないといけない。
――野依良治理事長の責任については?
岸委員長:これもそれなりに議論したが、なかなか難しい。不正問題をどこで止めておくか、どこまで不正ということにするか。また、組織上、調べていくと、現実に問題が起きているのは、ほとんどCDBの中だった。
理事に対して、人を少し入れ替えて、強い専門家の組織をきちっと作れというようなことを書いてあるが、それはどちらかというと、この問題が起きたあとの対応に、不満や疑義を感じたというところがある。
そのままいくと、理事長の責任になる。さらに、そのうえには、任命した文部科学大臣になる。いったいどこまで持っていくかというのが、こういうときの最大の課題だ。
やはり、ユニットとしてのCDBの再興を、現理事長にしっかりと先導してもらうということを求めている。そのあとに必ず、理事長はご自分で、いろいろなことを十分、お考えになると確信している。
――小保方さんの採用に関して、いろいろ特例があったということをCDBの自己点検検証委員会も指摘している。採用の正当性について、改革委員会としてはどう考えているか?
岸委員長:法律的には、最終的に理事長が任命するのは、まったく問題ないと言えるし、CDBが決めていた内規を守らなかったという意味では、大きな課題があるという言い方もできる。
竹岡委員:そもそも内規的な内規がないような感じがする。ただ、この辺はむしろ、CDBの自己点検の報告書で詳しく書かれているし、そちらに聞いていただけると事実関係的に良い。
とはいえ、竹市雅俊センター長やCDBの自己点検委員会の委員長からも、じかに話を聞いている。提言書に書いた通り、手続きを飛ばした採用のどこに理由があったのか、疑いを持っている。
――CDBの解体と時期は理研が決めるべきだと思うが、改革委としては、どれくらいの時期に解体を想定しているのか?
岸委員長:やはり今年中にやらないと遅いだろう。新たな組織は、できれば来年度くらいからスタートするのが普通だと思う。
ただし、難しい点はある。今、人がいるということ。一方で、やさしい面は、全員任期付きということだ。時期的には、やはり何年もかかるものではないという気がする。
――解体の意味だが、今あるユニットだとか、研究グループを解散させることを含めた意味なのか?
岸委員長:2回前の委員会のあとに、「大幅な改革」と言った。それから「解体」とか「廃止」とか。けっこう、研究者がいるときは言い方が難しい。ただ今回の解体は、やはり理研内で組織名を変えて、新しいものをつくるという意味で言っている。
理研が、一番国策にあって、一番大事なのは「量子力学だ」というならば、それでも良い。最も必要だと思うことをやる、と。それは今のものに近いこともありうる。ということで、「いったん更地になって、考えてください」という意味だ。
――CDBに関しては、実験グループや実験チームを再構成するということか?
岸委員長:たとえば、実験グループが10個あるが、次に何をつくるかで非常に影響を受ける。わりとつながるところもあるし、どんどん減らしていくところもある。
――CDBの解体・再興というのは、看板の掛け替えに終わらないのか?
岸委員長:看板の掛け替えになるかどうかについては、我々は条件を付けたつもりでいる。
また、私はこれまで5つの研究所にいた。そのうち3つは今は潰れている。身分的にはまったく困らなかったが、内容は本当に変わった。付き合う人など。ある意味で、看板の掛け替えだが、内容はガラッと変わった。それを期待している。だから、あまり心配していない
――理研CDBのiPS臨床研究への影響はあるのか、ないのか?
岸委員長:iPSの臨床研究は、理事長が本当に大事だと考えれば、どんなかたちでも維持することができる。その部分だけでも、理事長直轄で5年やるとか、なんとでもなるのが独立行政法人だから、全然心配していない。
――特定国立研究開発法人の指定にふさわしい法人と考えるか?
岸委員長:特定国立研究開発法人というのは、まだ定義がよくわからない。何かお金がいっぱいつくというけども、日本の財政状態からそんなにつくことがあるのか、という心配もある。ふさわしいかどうかについて、今はそんなに慌てても仕方ない時期だというのが、私が考えているところだ。
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