2014年06月13日 11:50 弁護士ドットコム
都心のマンションの一室で、女性が鉄パイプを持った集団に顔や背中を殴られる――。想像するのもおぞましいが、そんな光景がインターネットで生中継されていたとして、話題になっている。
【関連記事:「ソナチネは私の名前にしてほしい」 新垣さんが佐村河内さんに「著作者人格権」主張】
報道によると、生中継をしたのは女4人の集団とみられ、5月に知人女性を鉄パイプなどで暴行し死亡させたとして、傷害致死容疑で逮捕されている。生中継されたのは、その時の様子だという。
亡くなった女性の身体には、殴られたアザ以外にもタバコの火などを押し付けられたやけど痕もあったそうだ。そのような「残忍な」様子をインターネットで生中継する行為そのものに、何らかの法的な問題はないのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
「まず、そのような様子を生中継したことが、刑事事件として、何らかの犯罪にあたるかどうかですが、結論としては犯罪にあたらないと考えます。
表現の自由は、原則として他人の権利を侵害しない限り憲法上保障されており、暴力的表現であってもそれは同様です」
伊藤弁護士はこのように指摘する。たとえ、他人が殴り殺される様子をネット中継していても、「それ自体」は犯罪にならないということだ。
すると、仮に「集団暴行の様子を撮影・中継していただけの人」がいたのだとしたら、その人は罪に問われないのだろうか?
「もし、その人が暴行をした集団と無関係に、たまたま目撃した犯罪現場を撮影しただけなら、罪に問われることはありません。
しかし、その人が、共謀して暴行を行った集団の一員で、役割分担として撮影・中継行為を担当していた場合は、直接暴行をしていなくても、傷害致死罪の共同正犯や幇助として処罰されます」
実際には手を出しておらず、撮影していただけでも、共謀して暴行をしたと見なされれば、処罰の対象となるということだ。
伊藤弁護士は続けて、民事上の責任についても、次のように述べていた。
「知人女性に対して暴行して死に至らしめることは、民事上『不法行為』となります。したがって、女性の遺族は、犯人に対して損害賠償を請求する権利があります。
損害賠償の額を算定する際には、不法行為の態様なども考慮されます。今回報じられているように、被害者にとって屈辱的な動画を生中継する行為は、精神的な苦痛が多大であるとして、慰謝料額が増える理由の一つになると考えられます」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/