第82回ル・マン24時間耐久レースは12日、3回の予選を終え中嶋一貴がアタッカーを務めた7号車トヨタTS040ハイブリッドがポールポジションを獲得。日本人ドライバーとしてル・マンで初のポールという快挙を達成したが、予選後、喜びに沸くピットで一貴に予選の状況と、喜びのコメントを聞いた。
3回の予選セッションを経てグリッドが決するル・マン24時間。11日のフリープラクティスでトラブルに見舞われていた7号車トヨタは、予選に向けエンジンを換装。事前から一貴を予選アタッカーに据え、予選2回目のセッション終盤の赤旗が解除されたあたりから、他のLMP1勢とともにアタックを仕掛けていった。
「あの時はまだニュータイヤじゃなかったので、タイムが出せればいいかなと思っていました」という一貴だったが、ユーズドながら連続でアタックを仕掛けていくと、その時点で予選上位を占めていたポルシェ勢をトップの座から引きずり降ろした。これで7号車がトップとなり予選2回目が終了し、ナイトセッションとなる予選3回目に臨んだ。
「本命は3回目の最初でした。クルマはタイムを出すには十分すぎるくらいのいいバランスでしたね。その辺はチームに感謝です」という7号車トヨタTS040ハイブリッドは再び一貴に委ねられると、クリアラップをとり、3分21秒789というタイムをマーク。ポルシェ勢に対してコンマ3秒のマージンを築いた。
その後しばらくはアタックは行われず、コンディションが最も良くなり、気温も下がる予選3回目終盤に向けトヨタ、ポルシェ、アウディの3メーカーは準備を進めていった。しかし、予選を通じて相次いだクラッシュがこのタイミングでもインディアナポリスで発生し、イエローフラッグ区間は最後まで解除されず。一貴が3回目序盤のタイムで、日本人初のポールポジション獲得という快挙を決めた。
最後のアタック合戦に向けてコースインしていた一貴は、「日本人初ポールというのは、予選が終わってから聞きました。帰ってきて人混みができているのでビックリしましたね(笑)」と、世界中のメディアが詰めかける2番ピットへ帰還。TS040から降り、チームメイトのアレックス・ブルツ、ステファン・サラザンと喜び合うと、ル・マン24時間の恒例とも言えるミス・ル・マンとの記念撮影に収まった。
一貴は「プレッシャーはなかったですけど、自分自身(ポールを獲る)チャンスはあると思っていたので、期待していた部分はありました。ただ、ポールを獲るためにリスクを全部とっちゃダメなんですよね。ある程度のリスクマネージメントの中でポールが獲れたので、良かったと思います」と予選を振り返った。
「ル・マンでポールポジションを獲るチャンスはそう多いものではないので、チャンスがある時に獲ることができて良かったです。あとは日本メーカー、日本人ドライバーで勝って終われるように頑張りたい」
あくまで一貴が見据えるものは24時間を戦った後の勝利だ。それは一貴にとってはもちろん、トヨタにとっても悲願の目標だ。
「ポールポジションというのは、レース全体からしたら数%くらいのものだと思っています。ただ、いちばん前からスタートできるということは、自分たちのペースで最初から走れるということなので、レースに向けても重要な結果だと思います」と一貴。
「まだまだこれからなので、レースを笑って終われるようにしたいですね」と一貴は14日にスタートする決勝に向け、気持ちを新たにしていた。