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人間は表現する生き物? 木嶋佳苗被告人が「自伝的小説」を公表する理由とは・・・

2014年06月12日 12:00  弁護士ドットコム

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「ステディーな彼がいない期間は一日もない。一人で夜を過ごした日は数える程しかない。そんな人生を送ってきた」。交際男性の連続不審死事件で1、2審で死刑判決を受けた木嶋佳苗被告人(38)=最高裁に上告中=が、自伝的小説「礼賛」を情報配信サービス「ニコニコチャンネル」で公開したことが話題になっている。


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木嶋被告人は6月9日、支援者を通じて、「ニコニコチャンネル」内に「木嶋佳苗チャンネル」を開設。小説の紹介文には「北国で生まれ育った幼少期から、単身上京して『普通ではない世界』へと足を踏み入れていく少女の成長と心の内面を赤裸々に描きます」と記されている。



すでに第0回と第1回が投稿されているが、第0回では、「私は愛した男性を嫌いになったことがない。十八歳以降の恋愛の終わりは、今交際している彼より、もっと好きな人ができたことが理由の全てだった」と主人公の「恋愛遍歴」をつづっている。



木嶋被告人は、今年1月にも支援者を通じてブログ「木嶋佳苗の拘置所日記」を開設。4月に更新を終了するまで投稿を続けていた。報道によると、今回の「自伝的小説」のケースも含め、手書きの文章のやり取りを通じて、公開したとみられる。



このように拘置所に収容された刑事被告人は、どこまで情報の発信が可能なのだろうか。刑事弁護にくわしい萩原猛弁護士に聞いた。



●「特異な環境の中では思索の時間が生まれる」


萩原弁護士は、過去にも同様のケースがあったことを紹介する。



「手紙のような形で、接見に訪れた人に文章を渡して、公表することは可能です。これまで、堀江貴文さんも刑務所から手記を発表しました。また、連続ピストル射殺事件の永山則夫・元死刑囚(1997年執行)も服役中に小説を出版して、新日本文学賞を受賞しています」



いわゆる「獄中手記」はこれまでも発表されてきた。今回は、「ニコニコチャンネル」を利用している点が異例といえるようだが、木嶋被告人の動画や音声は流せないのだろうか。



「接見では、紙でのやりとりしかできず、動画や写真撮影、録音はできません。弁護活動の一環として、弁護士が接見中の写真を撮影することはありえますが、一般の人ができるわけではありません」



しかし、なぜこのような小説を発表する気になったのだろうか。萩原弁護士は、こう説明する。



「拘留中という特異な環境の中では、1人になる時間が多くなり、思索の時間が生まれます。これまで生きてきた過去を振り返る環境に置かれるのです。人間は表現する生き物です。書くのが好きな人なら、今回のようなケースもありうるのではないでしょうか」



木嶋被告人も自伝的小説の第0回で「文章で表現することが、身体を拘束された特殊で制限の多い環境にあっても、思考という領域の中では自由でいられることの証明になれば良いと思っている」と記している。今後、彼女はどういった言葉をつづるのだろうか。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
萩原 猛(はぎわら・たけし)弁護士
(刑事弁護を中心に、交通事故・医療過誤等の人身傷害損害賠償請求事件、男女関係・名誉毀損等に起因する慰謝料請求事件、欠陥住宅訴訟その他の各種損害賠償請求事件等の弁護活動を埼玉県・東京都を中心に展開。)
事務所名:大宮法科大学院大学リーガルクリニック・ロード法律事務所
事務所URL:http://www.takehagiwara.jp/