2014年06月11日 11:20 弁護士ドットコム
出張が多いサラリーマンにとって、飛行機や新幹線などの交通費を「経費」として会社に申請するのは、よくあることだろう。そんな経費申請をめぐり、不正が発覚したことが話題になっている。NHKは6月9日、30代の男性技術職員が、業務で利用した航空運賃を水増し請求して、計155万円を不正に取得したとして、停職3カ月の懲戒処分にしたと発表した。
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報道によると、この職員は航空機の「割引運賃」を利用したにもかかわらず、内規の上限額を経費として請求。計36回にわたり、差額を得ていた。航空機の半券を添付していなかったことから発覚につながったという。
今回のニュースについて、ネットの掲示板では、職員を非難するコメントが多いが、なかには、「出張の交通費なんてちょろまかしが基本だよ」「お前らだって、新幹線の出張で、金券ショップでチケットかって、差額ちょろまかすだろ」といった意見も散見される。
NHKは今回の不正請求について、刑事告訴は見送る方針だというが、経費を「ちょろまかす」行為が犯罪になることもあるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
「今回のようなケースは『詐欺罪』に該当する可能性があります。実際には割引された運賃しかかかっていないにもかかわらず、会社の経理担当者をだまして内規の上限額を得ていたからです。今回は、刑事告訴は見送られたようですが、停職3カ月というのも本人にとっては将来に響く重い処分ではないでしょうか」
秋山弁護士はこのように説明する。会社のお金を不正に得るケースといえば、「横領罪」に関する報道を見かけることが多いが、今回のケースとはどう違うのだろうか。
「『横領罪』の場合は、『自己の占有する他人の物』が対象になります。会社のお金を管理する経理担当者が着服する場合は『横領』になります。しかし、今回のケースは、自分でお金を管理していたわけではなく、経理担当者をだましたということで、『横領』ではなく、『詐欺』ということになります」
一般的な話として、割引運賃で飛行機や新幹線を利用して、経費申請で「差額」を自分の懐にいれることは、犯罪行為になってしまうのだろうか。
「会社の内規でどう定められているかにもよります。実際にかかった金額にかかわらず、あらかじめ定められた一定額の交通費を支払うという内規の場合もあるでしょう。そういった場合は、違法とはいえません」
個別の事例ごとに、事情が異なってくるようだ。
「今回のような交通費の不正請求は、懲戒処分にとどまらず、犯罪として刑事事件になってしまう場合もあります。『ちょろまかし』を安易に考えず、会社の規則をきちんと確認して、道を踏み外さないように気をつけましょう」
秋山弁護士はこう警鐘を鳴らしていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債務整理、契約紛争、離婚・相続、不動産関連、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.org/