2014年06月09日 22:31 弁護士ドットコム
実在する少女の写真などを参考にしてCG(コンピュータ・グラフィックス)画像を作成し、画像集2冊にまとめて販売した50代の男性被告人が、「児童ポルノ禁止法違反」の罪に問われている。その裁判がいま、東京地裁で進行中だ。
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最大の争点は、被告人の作った画像が、はたして「児童ポルノ」なのかどうかだ。
6月9日の第4回公判で行われた弁護側の冒頭陳述で、壇俊光弁護士は「検察側の主張が明らかでない」「犯罪の具体的事実が特定されていない」と指摘したうえで、「(被告人が作った画像は)児童ポルノではない」などとして、全面的な無罪を主張し、公訴棄却(裁判打ち切り)にするべきだと訴えた。
どうして、CG画像が「児童ポルノではない」と言えるのだろうか。警察は逮捕時、この画像について、「過去に出版されていた写真集の『実在する少女の裸体』の画像に一部加工したもの」と説明していた。
一方、弁護側の主張は、次のような内容だ。
「被告人が、写真集から直接用いたものはない」「作画のために利用したのは、輪郭をトレースした線だけであり、それもそのまま用いたのではなく、作画の際に参考にした程度にすぎない」。
被告人は美大卒で、CGを作成する際には、少女の写真だけでなく、他の女性の画像や人体解剖図、3D模型なども参考にしたのだという。
そのうえで弁護側は、同法の定義する「児童ポルノ」は、「実在する児童」の姿態を直接描写するものだから、姿態を創作したものは含まないとして、被告人は「芸術作品を創作しただけ」と結論付けている。
もう一つ、目を引いた主張は、元ネタとされる写真集の被写体が、CG製造時にも、法施行日にも、すでに「児童ではない」という点だ。弁護側は、同法の禁止する「児童ポルノ」は製造時に対象が「児童」であることが要件だと指摘する。
ところが、元ネタ写真集の発刊は、1980年から88年ごろにかけてだという。そうすると、2009年ごろとされるCG製造時はおろか、児童ポルノ禁止法の施行日である1999年11月1日にも、「児童」でないことは明らかなのだ。
さらに弁護側は、写真集が当時、「芸術的で、わいせつ図画には該当しないとして、適法に発刊されていた」と指摘。したがって、それを参考に似たCG画像を作成したとしても、それは芸術作品であり、「性欲を興奮させまたは刺激する」という「児童ポルノ」の要件をみたさないとした。
弁護側はこうしたポイントを挙げた上で、今回CGが作成された過程で、「児童に対する性的搾取・性的虐待は一切存在しない」。「いかなる意味においても被告人は無罪である」と締めくくった。
この裁判は当初、裁判官が1人で審理する「単独審」だったが、5月14日の第3回公判から裁判官3人による「合議審」に変更された。弁護活動に参加する弁護士も、回を追うごとに人数が増えており、6月9日の第4回公判には8人が出席。弁護側席が埋まる状況だった。また、傍聴席にも複数の弁護士が訪れており、事件に対する注目度の高さをうかがわせた。
三上孝浩裁判長はこの日、事件の争点・証拠整理のための「期日間整理手続」(非公開)を7月14日に行うことを決めた。検察側がどのような立証をおこなうのか、この手続きでその全貌が明らかになるはずだ。判決が出るのはおそらくしばらく先だが、今後の展開から、目が離せない裁判になりそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)