2014年06月09日 21:01 弁護士ドットコム
子どものわいせつな写真や画像などを「所持」しているだけで罰則を科す児童ポルノ禁止法の改正案が、衆議院で可決されたことを受け、中小出版社でつくる日本出版者協議会(会長:高須次郎緑風出版社長、94社)は6月9日、改正案への反対声明を発表した。
【関連記事:女子高生の「性的シーン」が問題に!? 話題のアニメを審議している「BPO」とは?】
声明では、「漫画・アニメの規制は削除されたが、性的被害に遭っている児童を守るという本来の目的を大きく逸脱しており、冤罪を引き起こしかねない」と批判。特に、児童ポルノの定義について、「定義が曖昧なままでの単純所持規制の新設は、過去に入手した出版物を破棄しなければならない義務が生じ、焚書そのものとなりかねず、到底容認できない」としている。
また、「自分の子供の水着写真を所持しているだけで、規制の対象になりかねない」「アイドルの水着雑誌を持っているだけで、別件逮捕の口実にもなりかねない」と恣意的な運用が起きる可能性についても懸念を表明している。
日本出版者協議会の反対声明の全文は、次の通り。
「児童ポルノ禁止法」改正案が、6月5日、衆議院本会議で可決された。
昨年の改定案にあった漫画・アニメの規制は削除されたが、性的被害に遭っている児童を守るという本来の目的を大きく逸脱しており、冤罪を引き起こしかねないので日本出版者協議会(出版協)はこの法案に反対する。
出版協は2010年11月の東京都青少年条例の改定に反対声明を出した。同条例に、都民が「児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する」とあるのは、権力による恣意的運用の危惧があり、不当な逮捕や、冤罪を起こす疑念があり、加えて、児童ポルノの定義が曖昧なままでの単純所持規制の新設は、過去に入手した出版物を破棄しなければならない義務が生じ、焚書そのものとなりかねず、到底容認できないという観点からである。
今回の「改正案」も現行の曖昧な定義をそのままに「単純所持禁止」と「処罰規定」(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)を設けており、反対せざるを得ない。かつて国会において、児童ポルノ処罰法が上程されたが、単純所持の処罰化に疑義が呈され、廃案になったことをふまえるべきである。
法案で定義する児童ポルノは、18歳未満の児童が性交や性交の類似行為をさせられたりするものだけでなく、「児童が衣服の全部または一部をつけていないもので、性欲を興奮、刺激するもの」を含めている。そのため自分の子供の水着写真を所持しているだけで、規制の対象になりかねない。またアイドルの水着雑誌を持っているだけで、別件逮捕の口実にもなりかねない。
このような規制強化は表現の自由を著しく損ねる恐れがあり、児童を守るという本来の人権擁護の目的とはかけ離れたものとなっており、改めて反対を表明する。
(弁護士ドットコム トピックス)