2014年06月09日 12:31 弁護士ドットコム
東京メトロ(地下鉄)の売店で働く契約社員ら4人が5月上旬、正社員との間に「賃金格差」があるのは労働契約法に違反するとして、東京地裁に訴えた。訴訟の相手は、売店を運営する東京メトロのグループ会社「メトロコマース」だ。3年分の賃金格差などを含む計約4200万円の損害賠償を求めている。
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報道によると、4人の原告は2004年~06年から、有期雇用の契約社員として働いていた。品物の発注や接客など、正社員とほとんど同じ内容の仕事をしていたが、1カ月の給料やボーナスに大きな差があったという。また、正社員には与えられる住宅手当や退職金もなかった。
2013年4月から施行されている改正労働契約法では、有期雇用を理由にして不合理な労働条件の格差を設けることを禁じている。今回、この規定を根拠とした全国初の裁判になるということだが、その狙いはどこにあるのだろうか。原告側の代理人を務める青龍美和子弁護士に聞いた。
「改正労働契約法の20条では、期間の定めのない労働者(正社員)と有期労働者(契約社員やアルバイト)との労働条件の違いについて、業務の内容や責任の程度、その変更の範囲、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないと定めています」
このように青龍弁護士は説明する。今回の原告は、全員が契約社員。つまり、有期労働者だ。
「原告はいずれも、有期労働契約を締結しています。しかし仕事は、商品の販売や発注、返品、客への案内など、正社員と全く同じなのです。そこで、原告たちは労働組合をつくり、会社と団体交渉したり、ストライキをしたりしてきました。
しかし、正社員との賃金等の格差是正についての話し合いで、会社は、比較対象となる正社員の労働条件の資料を開示しないという態度をとっています」
比較となる資料を開示しないとは、誠意に欠ける対応のようにも感じる。「待遇差は大きい」ということを証明しているようなものだ。
「実際に待遇差は大きく、こうした事情から、提訴に至ったのです。原告ら契約社員と、正規社員との賃金等の格差は不合理な差別であり、労働契約法20条に違反することは明らかです。
この裁判で、原告たちの正社員との格差是正を勝ち取るとともに、多くの非正規労働者の労働条件の改善や格差是正にもつなげていきたいと思っています」
正社員と非正規労働者の待遇格差問題を問いかける大事な裁判だ。今後の行方を見守りたい。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
青龍 美和子(せいりゅう・みわこ)弁護士
2011年12月弁護士登録。解雇や雇止め、セクハラ・パワハラ、労働組合に対する不当労働行為などの労働事件を担当し、離婚やDVなどの家庭問題にも取り組む。福島原発事故訴訟やB型肝炎訴訟などの集団訴訟にも参加している。
事務所名:東京法律事務所
事務所URL:http://www.tokyolaw.gr.jp/