2014年06月08日 13:50 弁護士ドットコム
一人暮らしのアパートに転がり込んできた「いとこ」を追い出したい――。そんなネットの投稿が話題を呼んでいる。
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投稿によると、部屋の主は19歳の女性で、両親が他界したため一人で働いて生計を立てている。そんなところに、大学4年のいとこ(成人男性)がやってきた。就職活動のためにバイトを辞め、生活費が足りなくなったという。
ところが、このいとこの男性は、アパートの家賃を含めたお金を全く出さないだけでなく、家事も一切やらず、食事も女性が用意したものを食べている。にもかかわらず、しばしば女性にキレることがあるという。女性もついに我慢ができなくなったようで、「怒りが収まらないから、追い出したい」と書いている。
このように自宅に親族がきて居座ってしまった場合、どうすればいいのか。「親族間には扶養義務がある」とも聞くが、それに違反しない形で、迷惑な親族を追い出すことはできるのだろうか。小澤和彦弁護士に聞いた。
「民法は親族間の扶養義務について、『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』と定めています。子や両親、祖父母、そして、兄弟や姉妹には、お互いに扶養する義務があることになります」
とすると、直系血族(子・父母・祖父母)や兄弟姉妹以外は、扶養義務はないと言い切ってよいのだろうか。
「そうとは言い切れません。民法では、『家庭裁判所は、特別の事情があるときは、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる』としているのです。このため、裁判所の判断により、直系血族や兄弟姉妹以外でも、特別に扶養義務を負わされる場合もあります」
そうすると、今回の事例の「いとこ」という関係は、どうだろう。
「いとこは、父や母の兄弟姉妹の子なので、直系ではありません。したがって、当然に扶養義務があるわけではありません」
それでも、「三親等の親族」であれば、特別の事情があるときは、裁判所に扶養義務を認定されることがありうるわけだが・・・。
「この点、いとこは、『四親等の親族』です。したがって、当然の扶養義務がないのはもちろんのこと、裁判所の判断により、いとこに対する扶養義務が定められるということもないのです。
ですから、結論として、いとこに一緒に住ませる気がないのであれば、出て行ってもらうこともできます。もし、いとこが自分で立ち退かない場合は、裁判で建物退去の請求をすることもできるのです」
では、いとこではなく、自分の兄弟姉妹が居候した場合は、扶養義務は生じるのだろうか。
「そうですね。さきほど説明したように、兄弟姉妹の場合は、扶養義務があります。しかし兄弟姉妹だとしても、当然に、自分だけが負担を負わされるということにはなりません。親やほかの兄弟たちも同様に扶養義務があるのですから」
それは、どうやって分担を決めればよいのだろう。
「たとえば、兄弟姉妹が複数いて、そのうちの一人が経済的に窮乏しているとき、誰が扶養しなければいけないのか、扶養をどの程度しなければいけないのかは、明確に決まっているわけではなありません。話し合いがつかなければ、最終的には、裁判所が裁量で定めることになります」
小澤弁護士は、このように説明していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
小澤 和彦(おざわ・かずひこ)弁護士
第二東京弁護士会多摩支部 両性の平等委員会委員、東京都西東京市男女平等参画推進委員会委員
事務所名:弁護士法人東京多摩法律事務所
事務所URL:http://www.tokyotama-lawfirm.com