「『縁石にあまりアグレッシブに乗るな』って、言われました」
予選後、可夢偉はそう言って、ため息をついた。なぜなら、予選前のフリー走行3回目で、ドライブシャフトが壊れたからだ。
「7コーナー(ふたつ目のシケインの出口)を立ち上がった直後におかしくなったので、無線で伝えたら、『すぐに止めろ』と言われた」という可夢偉は、ヘアピンのアウト側にあるエスケープゾーンにゆっくりマシンを止めて、セッションを終えた。
フリー走行後、ガレージに戻ってきた可夢偉のドライブシャフトを調べると、前日のフリー走行でトラブルが出たチームメートのマーカス・エリクソンと同じような状態で壊れていたことが判明。原因を特定することができないまま予選を迎えなければならなかったチームは、可夢偉に「とりあえず、縁石に激しく乗るな」という指示を送って、予選に臨んだ。
「でも、ここは縁石に乗らない速く走ることができないサーキットだから、どうすればいいんだろうって。そもそも予選までもそんなに縁石に激しく乗っていなかったので、ドライブシャフトが壊れた原因が縁石なのかどうかもわからない。もしかしたら、グリップがなくてコーナーの立ち上がりでリアタイヤが空転しているために起きたのかもしれない。モナコほどではないにしろ、ここでも4速でまだホイールスピンしてましたから、ドライブシャフトへの負担は相当大きかったはずです。でも、原因はまだわかっていないし、ふたりのドライバーとも同じところが壊れたので、とりあえずレースでも縁石にのらないつもりですが……」
チームは予選前にドライブシャフトとともに、ギヤボックスも交換。予選20位だった可夢偉は、ピットレーンスタートが予定されているエステバン・グティエレス(ザウバー)を除いて最後尾となる21番手からスタートする。70周のレースは、ライバルとだけでなく、自分のマシンの信頼性とも戦わなければならない厳しい旅となりそうだ。
(尾張正博/F1速報)