カナダGP開幕前日の6月5日、モントリオールの街中でちょっとした食事会が催された。主催したのは、小林可夢偉。招かれたのは、カナダGPの取材に訪れていた日本人メディアだった。これは「日頃、サーキットでは限られた時間での取材しかお付き合いできないでいるメディアの方々に、お礼も兼ねて、もう少し交流を深める場を設けたい」(可夢偉のマネージャーを務める船田力氏)という可夢偉側の希望によって開かれた。
会場となったレストランも可夢偉本人が選定した、チャイナタウンにある餃子専門店。具材は豚肉、キャベツというシンブルなものから、それにセロリ、椎茸、ズッキーニ、牛肉、海老などが入ったさまざまな種類を水餃子と焼き餃子の両方とも選ぶことができるとあって、お店は行列ができるほどの人気ぶり。その列の中にはF1チーム関係者も複数いた。
そんな中、招待された5名の日本人メディアは可夢偉と船田マネージャーとともに、1皿15個入りの餃子を10皿以上も平らげながら、普段サーキットではできないような内容の話題で盛り上がった。F1ドライバーがメディアと個人的に食事することはそれほど珍しいことではないが、現場に取材に来ているメディアを全員招待して食事するというのは、稀なことである。少なくとも、日本人F1ドライバーがそれを行ったのは、私の記憶では94年サンマリノGPが行われた、イモラ以来のことである。
3時間以上にも渡って餃子をつつきながら、オフレコという前提ながらメディアが突っ込む質問に嫌な顔ひとつ見せずに答えていた可夢偉を見ながら、1年間F1を離れて経験を積んだ可夢偉の成長を実感したと同時に、今可夢偉が抱えているフラストレーションを強く感じたものである。彼が直面している問題を、私たちメディアが直接解決することはできないが、彼が抱えているフラストレーションを少しでも晴らす場となったのなら、幸いである。
(尾張正博/F1速報)