2014年06月07日 16:31 弁護士ドットコム
ベンチャー企業の創業メンバーが、サービスを軌道に乗せるために、昼夜なく働いた――。そんな武勇伝を聞くことがある。だが、経営陣ならともかく、従業員にまでそんなことを要求したら、ベンチャーではなく「ブラック企業」と見なされてしまうかもしれない。
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ただ、立ち上がったばかりのベンチャー企業には、労務管理の専門家を雇ったり、相談したりといった余裕がないケースもある。そんな企業では、自社の労働条件や雇用契約の内容が適法なのかどうか、担当者が不安を抱えているケースもあるようだ。
自社の「ブラック企業化」を防ぐために、最低限注意すべきことは何だろうか。労働問題にくわしい野澤裕昭弁護士に聞いた。
「ブラック企業とはなにかについては、さまざまな考え方がありますが、ブラック企業被害対策弁護団は、『違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業』と定義しています。
厚労省は、ブラック企業という言葉は使っていませんが、"若者の『使い捨て』が疑われる企業"という表現をしています。
つまり『違法な労働』と若者の『使い捨て』がキーワードです」
若者の「使い捨て」とは?
「ブラック企業で体を壊したある若者は『自分は燃料のように燃やされた』と述懐しています。この言葉にブラック企業の本質が示されています。
ですから、ブラック企業にならないためには、当たり前のことですが、労働者を人間として扱わなければならないという意識を、常に忘れないことが基本です。また、そうした意識のもと、『違法な労働』をさせないことが重要となってきます」
その「違法な労働」とは、どんなものだろうか?
「そうした職場で主として問題となるのは、次の4つです。まず、これらの指標をクリアすることが大事です。
(1)長時間労働・サービス残業
(2)ハラスメント・いじめ
(3)退職妨害
(4)有給休暇を取得させないこと」
それぞれ、気をつけるべきポイントは?
「(1)の労働時間に関しては、1日8時間、週40時間制を遵守すること。また、残業させるときは、法令に基づき残業時間をタイムカードなどで管理したうえで、きちんと残業手当を支払うことが重要です。
(2)のハラスメント・いじめを防止するには、職場で人格侵害やいじめがされていないか監視し、相談窓口をもうけるなどの配慮をするべきです。
(3)の退職は、原則として自由なので、そもそも引き止めなどをしないことですね。また、(4)は有給取得がしやすいように、休んでもいいような人員配置が必要です」
まずはこうした点をクリアしたうえで、より細かな部分は専門家に相談すべき、ということになるのだろう。野澤弁護士は次のように締めくくっていた。
「つまり、最低限必要なことは、労働基準法や労働契約法などの関係法規を遵守し、長時間労働をさせず、職場の環境について、上司等が監視・配慮することです。
厳しい競争にさらされている企業は、利益追求のあまり、無意識に労働者をモノ扱いする危険があります。そのことを肝に命じてほしいものです」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
野澤 裕昭(のざわ・ひろあき)弁護士
1954年、北海道生まれ。1987年に弁護士登録。東京を拠点に活動。取扱い案件は、民事事件、刑事事件、労働事件、相続・離婚事件等家事事件。正確、最善をモットーとしている。趣味は映画、美術鑑賞、ゴルフなど。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/