2014年05月29日 21:40 弁護士ドットコム
牛丼チェーン「すき家」で、5月29日の「肉の日」にストライキが行われる――。そんな情報がネットを駆けめぐり、その日に何が起きるのか、注目が集まった。「すき家の店舗では、ストライキはおこなわれていない」。すき家を運営するゼンショーホールディングスがそう説明する一方で、同ホールディングス傘下の工場では、従業員一人による「ストライキ」がおこなわれたという。
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この日まで、ソーシャルメディアを中心に「すき家ストライキ」をめぐる議論が盛り上がったが、なかでも大きな反響をよんだのは、ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士が書いた「ブラック企業へのカウンターパンチ ストライキ!」という記事だ。
佐々木弁護士はこの記事の中で、ストライキの手順や労働組合の役割について説明したうえで、「ブラック企業を、ストライキという強烈なカウンターパンチでノックアウトして、労働条件の大幅な改善を勝ち取りたいですね」とコメントしていた。
「すき家ストライキ」が予告された29日の夕方、佐々木弁護士に電話でインタビューし、今回の動きについて聞いた。
――今回の騒動についてどう思う?
店舗で働いているスタッフが、もし本当に要求をぶつけるというのであれば、使用者に打撃を与えないと意味がありません。今回は、自然発生的に、噂のように広がっていった部分がありますから、いろんな打撃を与えているとは思います。しかし、要求そのものは漠然としていますね。
たとえば、「ワンオペは絶対にやめろ!」とか、「深夜で一人で働かせるのは危ないからやめろ!」という主張が掲げられたうえで、インターネットで広がっていたら、影響があったのかなと思いますが、「ストだ!ストだ!」と野次馬的な広がりが多かった気もします。
他方で、面白い動きだったというのは、間違いないと思います。
――そもそも、ストライキはどういうふうにおこなわれるのか?
まず、労働組合として、使用者に要求をぶつけます。その要求が通らない場合に、「スト権」を確立するための投票をおこないます。その投票でスト権を確立したら、できれば事前に通告したうえで、ストライキに突入する。これが違法ではない、オーソドックスなストライキです。
逆に言えば、労働者が単に会社に行かないとか、単に欠勤してしまうというのは、正当なストライキにはあたらないでしょう。
――どういうストライキならば、正当といえるのか?
ケースバイケースで違ってくるし、判断が難しいところがあります。一応、オーソドックスなやり方が正しいといえるでしょうが、あとは、個別具体的な判断になるでしょう。
過去の裁判例をみると、外国人実習生があまりにもひどい労働環境のために、みんなで職場放棄したというケースについて、ストライキが認められた例があります。ただし、それはごくごく例外といえます。逆に、労働者がみんなで一斉に「有給休暇を取ってやろう」として、本当に有給を取ったケースで、ストライキにあたらないとされた判例もあります。
――改めて、今回の「ストライキ騒動」を振り返ると?
そもそも、「労働条件が悪いのでストライキをやったらどうか」という発想は、非常にまっとうだと思います。ただ、それが従来の枠ではない、という難しさもあります。今後は、いろいろな分野の人たちが考えて、どうまとめていくかというのが課題でしょう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
佐々木 亮(ささき・りょう)弁護士
東京都立大学法学部法律学科卒。司法修習第56期。2003年弁護士登録。東京弁護士会所属。東京弁護士会労働法制特別委員会に所属するなど、労働問題に強い。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/