2014年05月27日 11:00 弁護士ドットコム
人気アイドルグループAKB48のメンバーらが岩手県の握手会で襲撃された事件。多くのファンにショックを与えたが、ツイッターでは、容疑者の顔写真と偽った画像が出回ったり、メンバーの死亡説が流れるなど、いくつもの悪質なデマが流されたようだ。
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顔写真については、新聞やテレビが実際の容疑者の顔写真を報じると、ツイッターでも「昨日ツイッターで出てた画像と別人じゃん!」といった非難の声があがったが、すでに数多くリツイートされ、拡散したあとだった。
こうしたデマを流した人物が、何らかの罪に問われることはあるのだろうか。また、確認もせずに、そのままリツイートした人の責任はどうだろうか。ネットの中傷問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
「ネット上で他人を引っかけるようなデマを流すことは、ネット用語で『釣り』と言われたりもします。なかにはジョークで済ませられるものもありますが、他人の権利を侵害するような『釣り』行為は、許されるべきではありません。
今回流れた数多くのデマのなかには、『ある特定の人物』が犯人であるかのように受け止められかねないようなツイートもありました。こうしたデマを流すことは、名誉毀損となり、違法とみなされる可能性があります」
どんな場合に名誉毀損になるのだろうか?
「まず、事件とは無関係の人を『犯人呼ばわり』すれば、その人が犯罪に関与したかのような誤解を与え、社会的評価を低下させることになります。
一般論としては、他人の社会的評価を下げる表現であっても、(1)その発言が公共の利害に関するもので、(2)発言の目的が公益を図ることで、さらに(3)発言内容が真実であるか、真実だと誤信したことに相当の理由がある場合であれば、名誉毀損は成立しません。
しかし、無関係の人を犯人視するデマを積極的に流すことは、(2)や(3)を満たしません。そのため、このような行為は、刑法の名誉毀損罪に該当し、民法上も不法行為に該当するでしょう」
それでは、そうした発言をリツイートするなど、デマを「拡散」してしまった人にも何らかの責任が生じるのだろうか?
「そうですね。そうしたツイートを拡散した人にも、一定の責任が生じます。
裁判例では、ネット掲示板に書き込まれた中傷を、別サイトに転載した行為が、名誉毀損にあたると判断されたケースもあります。
リツイートは、他人のツイートをコピーして転載する行為と考えることもできるため、もし裁判になったとしたら、おそらく『自分がツイートしたわけではない』という言い訳は通じないでしょう」
そうすると、場合によっては、責任を問われるということだろうか?
「そうですね。つまり、リツイートをする際にも、きちんと事実関係を確認する必要があるということです」
清水弁護士はこのように述べ、悪質なデマ拡散に荷担してしまうことのないように、注意を呼びかけていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
IT法務、特にインターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定に注力しており、平成24年には東京弁護士会の弁護士向け研修講座の講師を担当し、26年にも同様に講師を担当している。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp