メルセデスAMGが開幕6連勝、5戦連続1-2フィニッシュを決めたモナコGP。ここでも、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンが強さと速さを見せつけました。
確かにメルセデス独走のレースでしたが、ふたりは常に接近戦を繰り広げてくれたため、途中目が離せない、素晴らしいレースとなりました。25周目にセーフティカーが入り、各車がタイヤ交換(多くのマシンがスーパーソフトからソフトへと交換)をしてもその状況は変わらず、メルセデスのリードがどんどん開いていきます。
がしかし、状況が変わったのは55周目あたりです。この頃からコース上で最速のマシンはメルセデスではなく、レッドブルのダニエル・リカルドに取って変わりました。メルセデスは突如としてペースダウン。42周目頃にロズベルグは燃費に問題を抱え、ハミルトンも左目にゴミが入ったということで、65周目頃から大きくペースダウン。10秒あったリカルドとの差がどんどん減少し、73周目にはその差が0.5秒となっています。ただ、レッドブルはオーバーテイクに欠かせない“トップスピード”という武器がメルセデスに比べて劣っているため、順位が逆転することはありませんでした。
メルセデスのペースはスティント序盤は圧倒的に速いものの、徐々にペースダウン……これは燃費や身体的トラブルももちろん影響したでしょうが、メルセデスのマシンがタイヤに厳しいということも言えそうです。ほとんどデグラデーションが無いと言われた今回のタイヤで、これほどまでペースに影響するとは……無敵と思われたメルセデスの、弱点がひとつ浮き彫りになったとも言えそうです。
一方のレッドブルは走れば走るほどにペースがアップ。ファステストラップこそ最終盤に新しいタイヤに履き替えたキミ・ライコネン(フェラーリ)に奪われたものの、ほとんどデグラデーションがなかったようです。一発のラップタイムではまだまだメルセデスの2台に大きく遅れを取っているため、逆転には至りませんでしたが……それでも今後に向けた一筋の光明とも言えそうです。
後方に目を転じてみると、他とは異なるタイヤの使い方で、入賞を果たしたドライバーがいたので、ちょっと検証してみましょう。ひとりはウイリアムズのフェリペ・マッサ、もうひとりはフォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグです。
マッサはスタート時に履いたスーパーソフトタイヤで、なんとレース距離の半分以上となる44周目まで走破してしました。しかも、デグラデーションの影響をあまり感じさせず、早々にタイヤを交換したフォースインディアやマクラーレンなどと互角に張り合うペースで走行しました。この作戦は、一見奇をてらったもののように見えますが、実際のラップタイムを検証すると、最終スティントではパフォーマンス的も上位の力を持つフェラーリ等と同様のペースを実現しており、理に適った作戦だったと言うこともできそうです。
ヒュルケンベルグの戦略も、他とは異なるものでした。多くのマシンがスーパーソフトタイヤでスタートする中、彼はソフトタイヤでのスタートを選択。最初のスティントを、タイムが出ないはずのソフトタイヤで、スーパーソフト勢と同様のペースで走行しました。この選択は悪くなかったと思います。ただ、他のドライバーたちと同じタイミングでタイヤを交換し、残り48周をスーパーソフトで走り切ろうとしましたが、デグラデーションの影響か、ペースがみるみる下落してしまったのです。
多くのライバルたちのリタイアと、抜けないモナコの特性がヒュルケンベルグに味方して5位の結果を獲ましたが、レース最終版にはコース上でもっとも遅い部類のクルマになってしまうこともあり、“作戦が成功した”とは言えそうもありません。
最後に、驚きの結果を残した9位ジュール・ビアンキ(マルシャ)にも触れておきましょう。マルシャは今回の入賞が、チーム設立以来初のポイント獲得となりました。“上位がトラブルでリタイアしたから、この位置を得ることができた”思われがちですが、実はマルシャのマシンはここ数戦急激に進化。最初のスティントこそケータハムらの後方に位置してしまいペースは伸びませんでしたが、第2スティント以降はフォースインディア、マクラーレン、ライコネンなどと同様のペースで走り、8番手フィニッシュをもぎ取りました(レース走破タイムに5秒をプラスするペナルティにより、最終的には9位)。戦闘力が向上してきたマルシャ、今後も展開さえ向けば、入賞を狙えるレースがあるかもしれません。
さて次のF1の舞台はカナダ、モントリオール。サーキット・ジル・ビルヌーブは高速サーキットのひとつとしても知られています。そうなるとやはり、パワーに勝るメルセデスPUを使用するチーム、特にメルセデスの強さが目立つレースとなりそうです。F1第7戦カナダGPは、2週間後に行われます。
(F1速報)