日曜日のモナコは、前日の快晴に比べると雲が広がり、やや涼しいコンディション。ただ、心配されている雨は夕方以降という予報で、レースは概ねドライコンディションで行われると思われる。
モナコの空模様と同様、モナコGPのパドックの様子も晴れやかではない。というのも、昨年のモナコGP日曜日の朝、テストゲート疑惑でパドック中の注目を集めたメルセデスAMGが、今度はコース上のパフォーマンス以外の部分で関心を集めているからだ。土曜日の予選でメルセデスAMG勢がフロントロウを独占したものの、ポールポジションを獲得したニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)が、Q3の終盤にコースオフして黄旗を出し、レース審議委員会に呼び出されていたからである。
その後、レース審議委員会は違反につながる証拠がデータロガーとビデオから発見できなかったとして、ロズベルグを処分することはなかったが、後味の悪さが残ったことは否めない。実際、最後のアタック中にイエローフラッグが振られて、逆転ポールポジションの可能性が奪われたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は予選後、この件に関して質問されると、「その質問には何も答えない」と、明らかに不満があることを臭わせていた。
今回のケースで連想されるのは、2006年のモナコGPの予選で最後のアタックラップ、ラスカスで立ち往生したミハエル・シューマッハー(当時フェラーリ)の件だ。その時、シューマッハーとタイトル争いを繰り広げ、被害者のひとりとなったフェルナンド・アロンソ(当時ルノー)は、「06年のシューマッハーを思い出さなかったか?」と予選後の会見で質問されると、「実はその映像はまだ見ていない」と、質問をうまくかわした。同じような質問はセバスチャン・ベッテル(レッドブル)に対しても投げかけられたが、ベッテルも「イエローフラッグしか見ていない」と言及を避けている。
メルセデスAMGは通常、予選後にチームの会見を行っているが、その時間までにレース審議委員会からの結果が出なかったため急きょ中止に。レース審議委員会の決定は18時17分に出され、ロズベルグがスクーターに乗ってレース審議委員たちがいるコントロールタワーの横を通り過ぎてサーキットを後にしたのは、その数分後のことだった(写真)。
なお、FIAのレースディレクターであるチャーリー・ホワイティングから全チームに向けて、「レース中に1コーナー(サンテ・デボーテ)と10コーナー(ヌーベルシケイン)で事故が発生して、進路が封鎖され、白色の矢印が点滅した場合に限り、ショートカットが可能」という通達が出されている。
また、予選19番手だったジュール・ビアンキ(マルシャ)が、その後ギヤボックス交換し、5グリッド降格ペナルティが科せられたため、予選21番手の小林可夢偉(ケータハム)は20番手からスタートすることとなっている。
土曜日のロズベルグの件といい、レース前の通達といい、オーバーテイクが難しいモナコならではの緊張感に包まれながら、スタートまであと1時間半を切ろうとしている。
(尾張正博/F1速報)